55輪目 ページ9
「あっ、ミケちゃん！」
こちらに手を振りながら駆け寄ってくるさつきちゃん。しかし、その背にスクーターが迫ってきているのが見えた。
「！さつきちゃん…危ないっ！」「え？きゃっ！」
彼女をこちら側に引っ張るが、バランスを崩してしまう。せめて彼女をケガさせないように下敷きになる。
「ミケ、さつき！」青峰くんの声がした。
しかし、すぐに「ひったくりよ〜！！」という悲鳴が木霊する。さっきのスクーターらしい。
その声を聞くなり、黄瀬くんと青峰くんは追いかけて行った。
「大丈夫、さつきちゃん！」
「う、うん。ミケちゃんのおかげで助かったよ〜。」
「良かったあ。」彼女の言葉にほっとする。
「って、ミケちゃん！膝から血が出てるよ！」
彼女の言葉に膝を見ると、たしかに血が出ていた。下敷きになったときに擦りむいたのかな。じんじんとした痛みがあるが、たいしたことはなさそうだ。
「大丈夫だよ。さつきちゃんは怪我はない？」
「う、うん。けど、ミケちゃんが…。」
「このくらい怪我のうちに入らないよ。」
眉を下げる彼女に、大丈夫だと笑う。
「水と消毒を買ってきたのだよ。足を出せ、ミケ。」
するといつの間にか、真ちゃんが水と消毒を片手に立っていた。
「じ、自分でするよ。」
「いいから、さっさと見せろ。」
滲みるだろうなと思い、自分ですると断るが一蹴される。
「分かったよ…。」渋々、膝を見せる。
「滲みるぞ。」「う、うん。っ〜！」
水で流された後、傷口に容赦なく消毒をかけられて声にならない悲鳴をあげる。し、滲みて痛い！
ちなみに、その後はひったくり犯を捕まえて、私達は無事に帰路に着いた。
真ちゃんにおんぶされながら帰宅したのはまた別のお話。
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作者名：みぃ太郎 | 作成日時：2023年7月25日 21時
