29輪目 ページ31
「毎度、本当にすみません。」
「いいんだよ。悪いのはアイツだからな。」
頭を下げると、何でもないように笑う虹村さん。頭に乗せられた手は大きくて、あたたかい。
「けど、どうして分かったんですか？」
さつきちゃんが不思議そうに尋ねると、
「灰崎のことだから遅刻かとも思ったんだが…。けど、もしかしたら亜麻野のところへ行ってるんじゃないかと考えたんだ。」
赤司くんがさらりと答える。
流石の推理力です、赤司くん！
「赤司くんも、本当にありがとう。」
「いいんだよ。」
微笑みながら話す彼。
「まぁ、とりあえず早く座ろうぜ。そろそろこっちも出発しないと。」
虹村さんの言葉に、私達は頷いた。
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席の並びだが、私は虹村さんの隣に、さつきちゃんは赤司くんの隣になった。灰崎くん除けのためだ。
「それにしても、何で灰崎は亜麻野にちょっかいかけるんだろうな。」
「…本人は、『ちっこいくせに威勢が良いし、反応が面白いから。』って言ってました。」
思い出したら腹が立ってくる。なんて悪趣味なやつなんだ！
「…まぁ灰崎の気持ちは分からんが、亜麻野を構いたくなるのは少し分かるな。」と笑いながら話す彼。
「そうなんですか？」
「ああ。なんかこう、小動物っぽいんだよな。噛まれてもいいから構いたくなる…みたいな。小さいのに、よく働くし。なんかに似てんだよな。…あぁ、ハムスターが車輪を回ってるやつだ。」
彼は自分の言葉に納得したように笑顔で話す。
ガーン。
彼の言葉にショックを受ける。やっぱり小さいと思われていたんだ。しかもハムスターと同列にされた…。
彼の言葉にショックを受けていると、後ろからクスクスという笑い声がする。振り返ると、さつきちゃんが肩を震わせて笑っていた。
「さつきちゃん…。」
「ご、ごめんね。けど、想像したらたしかにハムスターみたいだなって思って…ふふふ。」
「もう、全然似てないでしょう。ねぇ、赤司くん。」
同意を求めるも、
「いや、案外似ているよ。体育館を走り回っている姿とか。」と彼は微笑みながら話す。
「赤司くんまで…。」
牛乳、もっと飲もう…。そう決意した。
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作者名：みぃ太郎 | 作成日時：2023年6月22日 13時
