いやいや、ただのバレー馬鹿。【影山飛雄】 (ページ4)

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スマホからアラームの音が響く。

真っ暗な部屋に不釣り合いなブルーライトが私を照らした。

…58分…。

両手を伸ばしていた動きがピタリと石のように固まった。

…58分！？？？

いつもなら遅くても45分には家を出ているのに。

昨日夜更かししたせいだ。

無意識のうちにアラームを止めていたであろう自分が憎い。

スカートのチャックを絞めながら階段を駆け降りる。

小さい立てかけタイプの額縁にいってきます、と声をかけると私は家を飛び出した。

間に合えー…！！

＿＿＿＿＿＿

立ち漕ぎをしたおかげか自己ベストを叩き出せた自信がある。

でも校門には先生はおろか生徒が一人もいない。

流れた汗が少しのそよ風で途端に冷えていく感覚がする。

恐る恐る、門の近くの時計を見上げた。

『＿＿＿＿＿＿＿！？！？』

声にならない叫び声をあげてしまう。

自転車から降りて、スマホを照らす。

〝05：35 〟確かに、そう映る待ち受け画面。

今から一度家に帰ったとしても、余裕を持ってホームルームには間に合う時間だ。

…ふむ、せっかくの機会だし校内を探検するのもいいかもしれない。

贅沢な悩みかもしれないが、

普段学校内で一人行動する事がない私にとって今の状況は珍しい状況だった。

休み時間、

授業中、

移動教室までの廊下、

女子トイレ。

女というのは群がる傾向がある。

それは決して悪いこととは思わない。

協調性や平和を重んじ、時にひび割れるものの人は誰しも不安を持つもの。

分かってはいるが、こうも常に人の視線があるのは少し息苦しくなる。

久しぶりの開放感。

さっきの自転車で体はあったまり、睡眠不足からくるテンションの上がり具合。

今なら何でもできそうだ。

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