いやいや、ただのバレー馬鹿。【影山飛雄】 (ページ21)

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ちょっとこの辺りで待っててね、と清水先輩に言われて大人しく体育館付近に突っ立っている私。

もう部活が始まっているのだろうか。

ボールの音が聞こえた。

することも無いので、電灯に群がる蛾のように、ふらふらと体育館を覗いた。

そこには日向くんと影山くん。

やっぱり底なしの体力だなあ。

彼らの悔しそうな顔をみていると私も昨日の試合が

フラッシュバックする。

…悔しいな。

体育館の扉を背にして、ズルズルとしゃがみ込んでしまう。

私が試合に出た訳でもないのに。

なのに、こんなに一喜一憂しちゃって。

《コート上の王様って呼ばれてるのはね＿＿》

及川さんの言葉がふと頭をよぎる。

一人じゃないよ。

だなんて、今更彼に伝えたって過去は消えないし、私の言葉一つでどうにかなる問題じゃないかもしれない。

それでも、この胸のざわめきはなんだろう。

日向くんと影山くんに出会ってからというもの、

最近私の感情ってば忙しないや。

「あれ、君３組の…。どうしたの？」

顔をあげると、二人の男子が立っていた。

バレーのスタメンに居た人達だ。

日向くんから聞いている。確か…

『山口くんと月島くん。初めまして。』

「誰？ってあぁ。昨日ギャン泣きしてた人。」

『し、してない！！から！！』

「いやいや、見れば分かるよ。その顔。」

あんまりの顔の酷さに静かに吹き出す月島くん。

噂で聞いていたが、確かにこの月島くんとやら人の痛いところを

ズバズバと！！

「つ、ツッキー…！」

慌てて月島くんと私を交互に見る山口くん。

多分、いい子なんだろうな。

それに対して彼はなんといえばいいのか…

『これからこの顔にも見慣れてもらうからね。

＿＿＿"ツッキー"？』

効果は抜群みたいだ。

明らかに顔を歪める彼にぎゃふんと言わせた気分になる。

私は勢いよく立ち上がり、

無理やり彼の手を握ってぶん回してやった。

勿論山口くんには普通の握手だ。

ほんのり頬を染める彼はなんて可愛らしい。

ツッキーは随分尖ってるなぁ。

ふふっ。

…でもおかげでさっきの暗い気持ちは跡形もなく消えていた。

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