いやいや、ただのバレー馬鹿。【影山飛雄】 (ページ19)

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あれから時間が経ち、私は体育館の女子トイレで目を冷やしていた。

いやぁ、落ち着いてみれば恥ずかしすぎる。

あの後、隣にいた女性三人組の人にも心配されて、穴があれば喜んで飛び込みたい気分であった。

手洗い場の正面に設置された鏡に映る自分。

目は時間を経過するごとに腫れていき、見事にパンパンだ。

例えるならのび太くんだ。

こんな顔を誰かに見られるくらいならサングラスをしたほうがマシ。

トイレの出口のドアノブを捻り、帰りのバスに乗ろうと歩き出す。

『へばっ』

最近よく人とぶつかるなぁ。

曲がり角から現れた人に頭を下げた。

「あ、ごめんね！痛くなかった？」

『…はい、こちらこそすみません。』

「…ねぇ、君。

飛雄の応援しに来てた子だよね？」

その場から立ち去ろうとしていたら不意に影山くんの名前を呼ばれ、思わず歩き出した足を止め、振り向いてしまう。

『まぁ、そうですね。』

「やっぱりね！って顔すごいね！！？」

しまった、見られてしまった。

慌てて顔を下に向けたが、保冷剤あるよと手のひらサイズの保冷剤を私に手渡してくれた。

なんて紳士な。

「ふーん。飛雄ちゃんってば良い彼女持ったね。

もしかして、君のおかげだったりするのかな。」

貰った保冷剤で瞼を交互に冷やしながら、

ようやく彼の顔をまじまじと視界に入れることができた。

彼女？私が？

何を勘違いしているんだろう。

誤解を解こうと口を開けたが、あの王様ってばほんとバレー意外にも取り柄があったんだ、などとボヤいた。

『…コート上の王様？』

影山くんの通り名的な？

他校にまで知られるくらい上手な人なんだ。

でも、なんだろう、この違和感は。

喉に小骨が刺さったように彼の発言には少し攻撃的であった。

「その様子じゃ、もしかして何も知らない？」

心臓のあたりがかすかに跳ね上がった。

これは疎外感、なのだろうか。

別に、仲良しこよしの関係ではない。

でもその割にはやけにむしゃくしゃする自分がいた。

『聞きたいです。教えてくれませんか？』

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