いやいや、ただのバレー馬鹿。【影山飛雄】 (ページ11)

今日:25 hit、昨日:39 hit、合計:14,686 hit

09. ページ11

.

次の日の朝、既に私の日常の一部となりつつあるボール出しのお時間だ。

さっぱりだったバレーの知識も基礎中の基礎ぐらいは身についたのではないだろうかと思う今日この頃。

私はいつ日向に昨日の返事を伝えようかと内心ソワソワしながらボールを投げていく。

今日出会ってすぐにその話題に触れなかったのは、彼らがいつもより練習に身が入っていたから。

普段が120%なら今日は150%…みたいな。

もちろん100%中の話だ。

特別急いでいる訳でもないのでまたの機会にすればいい。

ぶっ続けで練習に取り組む彼らに水分補給を促し、私は疲れていないのでボールを集める。

初めは休憩をしないのか、なんて尋ねたものだが、彼らは
ほんとーーーに底なしの体力のようで、聞いても無駄だと数日で理解した。

だから苦し紛れの水分補給だ。

私が抜けた後にバレー部の朝練があるのだからますます彼らが末恐ろしい。

普段より汗の量も多い彼らを眺め、疑問が浮かぶ。

『…なんか、今日は一段と気合い入ってるね。』

まるで戦前の武将のような。

日向くんも影山くんも瞳がギラギラとしている。

「もーすぐインターハイ予選だからな！！」

インハイ…確かトーナメント戦の公式大会、だっけ。

『ってことは、あおー…なんだっけ。

前に戦ったところと、もう一度戦ったりするの？』

＿＿＿しまった。

「絶対ェ…勝つ。」

「くそ、大王様め…。影山、俺にトスくれ！！」

ドリンクに手をつけていた二人の腕が固まり、地雷を踏んだと冷や汗が頬を伝った

が、それは地雷ではなく燃料を注いでしまったのだと気づく。

大王様。

話には聞いているが、二人が口を揃えて凄いと呼ぶ人だ。

…一体どんなバレーをするんだろう。

気合いが入り、雄叫びを上げだす彼らを宥めつつ、集め終わったボールを再び手にした。

「もし時間あったら顔出してよ！」

『ん、うーん。予定みて、それからまた連絡するよ。』

「毎日手伝ってくれてたんだしさ、見に来て欲しい！

…あ、もちろん暇だったらでいいけど！」

キラキラと光る瞳に心を撃ち抜かれ、他にどんな予定が入っててもすっぽかしてしまいそうだ。

「実際の練習とコートじゃ全く見え方が違うぞ。」

ボールを床に打ち付ける彼にハッとする。

『…みたい。私、行く！！』

.