鎖が29本 ページ29
「じゃああれは模造品だったんですか?」
「まあそうだねえ。本物が血に濡れちゃうと処理が面倒だもの」
「でも何で態々そんな事するんですか?」
「私は取引においで嘘をつかない。実際あれを本物だなんて云っていないし、助けてあげる、とも云ってないでしょう?」
「確かに……。じゃあ、」
「おい青鯖、入るぞ」
拷問の衝撃も抜け、太宰さんに拷問の方法について教えていただいているとノックと同時にに中原さんが入ってきた。
「中也、君ノックの意味ないよね」
「あ? 五月蝿ェな。俺はAを連れ戻しにきたんだよ。いつまで拘束してるつもりだ」
中原さんは相当お怒りらしく、顔に青筋が浮かんでいる。
対して太宰さんは相変わらずの食えない笑みで少しも気にした様子はない。
「ええ〜、もう一寸Aちゃんとお話ししたいのだけれど〜」
「ああ?もう充分話したろうが。行くぞA」
「は、はいっ」
外套片手に踵を返す中原さんに私は慌てて立ち上がった。
「仕方ないねえ。Aちゃん、また今度ね」
「はい、今日はありがとうございました」
軽く会釈をし、中原さんに続いて部屋を出た。
「ちっ、手前大丈夫か?」
「ええ、大丈夫ですが……」
「一応手前ンとこの間者だったんだろ? 其れに……拷問も初めてで……しかも彼奴の拷問はポートマフィアの中でも結構残酷で……色々その……衝撃だっただろ。
だからその……心配だったんだよ」
そう云う中原さんの耳は赤かった。
しかしその心配は無用だった。確かに人が目の前で殺されたのは衝撃だったし、拷問も初めて見た。
でも、太宰さんに教えていただいているうち、段々と気持ちがほぐれてきた。これがポートマフィアだと、実感した。
そして覚悟も大分固まってきたように感じた。私は、ポートマフィアで生きて行く。
「ご心配ありがとうございます。でも……大丈夫ですよ。私、頑張ります」
中原さんはよくわからないような、驚いた顔をした。
「ん……ならいいけど、なあ……。まあ、精々頑張れよ」
「はい、頑張ります」
「じゃあ戻ったらまず体力作りからやれよ」
「え、今日もですか……?」
「はっ、たりめえだ。頑張るんだろ?」
「……はい……」
中原さんは厳しい。だけどだからこそ頑張れる。
拳を握り締めた。
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れい - 続き、楽しみにしています(*´∇`*)/ (2017年8月3日 12時) (レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)
徒長(プロフ) - れいさん» ありがとうございます! (2017年8月3日 11時) (レス) id: f4aa93743b (このIDを非表示/違反報告)
れい - 読み方はボスですよ。 (2017年8月3日 11時) (レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)
徒長(プロフ) - ありがとうございます。読み方はしゅりょう、ですか?ぼすですか? (2017年8月3日 11時) (レス) id: f4aa93743b (このIDを非表示/違反報告)
れい - 黒の時代での森さんへの呼び方は首領、探偵社入社後は森さんですよ。 (2017年8月3日 10時) (レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:徒長 | 作成日時:2017年8月1日 12時