検索窓
今日:16 hit、昨日:0 hit、合計:71,246 hit

鎖が19本 ページ19

手前ンとこの間者、つまり月宮家のスパイ。
拷問、つまり太宰サンの云い方を借りれば一寸痛い事をして情報を聞き出す事。

私ははっきり云って血は苦手である。
痛いのも然り、苦しいのも然りだ。しかも悪魔の化身太宰サンの拷問となればその凄惨さは恐らく想像を絶するものだろう。
中原さんが私をかばって下さった理由がわかった気がした。

「……行き、たいです」
「はあ……」「へえ……」

お二人の声が揃うが云っている事は全く別だ。

「手前大丈夫なのかよ? ほんの数日前迄一般人だった奴が見ていいモンじゃねーんだぜ?」
「それは何となく……わかってます。でも、太宰サンの云う通り、そう云う経験が私には必要だと思うんです」
「うふふ、分かってるじゃないかAちゃん」
「それに……」
「それに?」
「答えに、繋がる気がするんです」
「はあ? 何の話だ?」
「成る程ねえ……」

中原さんは不思議そうな顔だか、太宰サンは興味深げに笑った。

太宰サンは確かに可笑しな人だ。
何を考えているかわからないし、突拍子のない事を云ったりもする。
でも、意味のない事はしない人だ。これも太宰サンがお世辞嫌いだと推理した時と同じ勘だが、それでも合っている気がする。
其処をもっと探れば、太宰サンの云っていた答えが分かると思うのだ。

「手前ら何の話してンだよ」
「うふふ、中也には関係のない事だよ。それじゃあAちゃん、行こうか」
「はい」
「……わぁったよ。何があっても手前の居場所は此処しかねェ。例えどんなに戻りたくたって手前はもう俺の部下になっちまったんだからな」
「……はい」
「格好付けてるの? 中也。でもいくら格好いい台詞云った処でチビはチビだよ?」
「ああ? それは今関係ねェだろ!」

中原さんの言葉に胸がじんわり熱くなるのを感じた。
もう、戻れない。戻らなくてもいい。私の居場所は、此処。普通の人なら嫌かも知れないけれど、私はそう云ってくれる人がいるだけで、とても嬉しかった。
お父さまは私の異能しか必要としなかったから。中原さんも同じかも知れないけれど、でも、それでも、嬉しかった。

「あの、そろそろ行きませんか」
「ああ、蛞蝓の相手してたら忘れちゃった。付いてきて」
「はい。中原さん、ありがとうございます。失礼します」
「……おう」

扉から出て行く時一瞬見た中原さんの顔は赤かった気がしたが、気の所為だ。武士の情け、と云う奴である。

「ねえ見た? 中也顔真っ赤だったよ!」

……武士の情けだ。

鎖が二十本→←鎖が18本



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (48 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
114人がお気に入り
設定タグ:文スト ,
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

れい - 続き、楽しみにしています(*´∇`*)/ (2017年8月3日 12時) (レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)
徒長(プロフ) - れいさん» ありがとうございます! (2017年8月3日 11時) (レス) id: f4aa93743b (このIDを非表示/違反報告)
れい - 読み方はボスですよ。 (2017年8月3日 11時) (レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)
徒長(プロフ) - ありがとうございます。読み方はしゅりょう、ですか?ぼすですか? (2017年8月3日 11時) (レス) id: f4aa93743b (このIDを非表示/違反報告)
れい - 黒の時代での森さんへの呼び方は首領、探偵社入社後は森さんですよ。 (2017年8月3日 10時) (レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:徒長 | 作成日時:2017年8月1日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。