secret base～秘密基地～ (ページ1)

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セミの声も静かになり、
秋が近づいてくる。

「A!!」

君は満面の笑みで近づいてくる。

「…叶乃」

僕は小さく微笑む。

君と夏の終わりを過ごす。

これは、初めて出会った夏から今年まで
ずっと夏の終わりを一緒に過ごしてきた。

だけど、…君と過ごす夏は今年で最後だ。

僕は、なかなか切り出せなかった。

「将来の夢って、どうする？」

叶乃は僕のとなりにちょこんっと座る。

「……宿題のこと？」

確か『将来の夢』を書くという
作文の宿題があった。

「作文、苦手なんだよね」

君は、ぱたんと寝転がる。

「…勉強の間違いでしょ？」

叶乃の成績はいつだって、
お世辞でもいいとは言えない。

「ははっ、Aは運動だけどね～」

「うるさい」

僕は勉強はそこそこできるが、
運動神経はほぼ０だ。

12歳の夏。

僕は君と過ごしたこの町から
出ていくことになった。

僕は、それを君にまだ言えないでいた。