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『みんな、同じだよ。』
「……?」
『誰も、その場から動かなかった。』
彼女の口からハンカチを離し、ポケットにしまった。
『自由に動けたのに。……でも、誰も……装置を止めようとはしなかった。……私もね。』
アメジストの目は、私だけを映していた。
『それにさ、私だったら……こっちに残した人に、自分の事を引きずって人生を生きて欲しくないって思うよ。
だから……全部、自分のせいにしないで。』
この言葉が、彼女の心に響くとは思ってない。たかだか会って数日の人間の……しかも、ケイジさんや他の人のように、信頼関係があるわけでもない。
それでも……兄弟がいるからなのかな。
あんな顔をされては、放って置けない。
『……ほら、ご飯……あー…サラちゃんの冷めちゃったけどさ、食べよう?』
コクリと頷いた彼女は、冷えた夕食を口に運んだ。私も、彼女と話している時に届いたおでんを口に入れる。
今日はうっかり朝食を抜いてしまい、昼もそんなに食べていないので……とても満腹感を覚えた。
夕食も取り終わり、席を離れて立ち去ろうとすると、手を掴まれた。
彼女の要件は、アトラクションに行かないかというものだった。私もアトラクションを進めなければいけないので、すぐに承諾する。
『……私で良ければ。誘ってくれて、ありがとう。』
アトラクションの中の通路は、少し他の場所よりも明るい。
二人で挑戦するために選んだモノは“心霊シャッターゲーム”。
これはサラちゃんからの提案だった。
夜中にこれを選ぶのは勇気があるなと、横を歩く彼女を見て思う。横目で、気づかれないようにチラチラと彼女を見ていると、突如彼女と目があった。
目が合った事で、一瞬心臓が止まる。
「……前から思っていたんだ。私のこと、呼び捨てにして欲しい。』
『よ、呼び捨て…?』
「その……友達から、ちゃん付けされるのは慣れてないんだ。」
恥ずかしそうに、そっぽを向いた彼女が言った。
『うん、分かった……サラ。』
そのままお互い笑いながら、アトラクションの説明が書いてある看板まで足を動かした。
説明文を読み、今回はサラちゃ…サラが挑戦することになった。私が気絶している間、似たようなものをやったことがあるらしい。
そのため、このアトラクションはサラに頼ることにした。
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でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます!なんとか5月中に2章完結目指して頑張ります。笑 (2020年5月20日 23時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 何度もコメントすみません…今日更新多くて嬉しいです…!(( お体にはお気をつけて!これからも楽しみにしています! (2020年5月20日 22時) (レス) id: cc998c0500 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - しきさん» え?そう言ってくれて嬉しい… (2020年5月16日 7時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - え?表紙好き… (2020年5月16日 1時) (レス) id: 0c957ac632 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます…! (2020年5月14日 21時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でででででん | 作成日時:2020年4月28日 9時