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『……………』
右腕に刺さった毒針は、思ったより痛くなかった。
血液を抜き取る注射より少し痛いかな、ぐらいである。
「……あはは、良かったね〜、ギン!自分に毒針がうたれなくてさ!!ていうか、どう?その安全な場所で見守るの……結構いい眺めでしょ、Qタロウ?」
「う、うぅ………A姉ちゃん………」
「ぐぅぅ…………」
『ノエルの言うことなんて、気にしなくていいよ。大丈夫。思ったより痛くないし……平気 平気!』
さすが遅効性の毒。
まだ体にはなんの変化もなく、至って元気である。
「ははは、その威勢…いつまで持つかな。」
「黙れ!!黙りやがれテメェ!!今すぐAを治療しやがれ!!」
鑑賞室から顔を覗かせたレコさんがノエルを怒鳴りつける。するとノエルが片腕を上にあげて、みんなに向けて言い放った。
「諦めちゃダメだよテメーら!まだチャンスは残ってるんだー!」
「ど、どういう意味ですか!?」
膜の内側に、再び手を当てたカンナちゃんがノエルに問う。彼女はポロポロと涙をこぼしながら、声を振り絞っている。
……あの涙、拭いてあげたいなぁ。
「毒針は全部で五本あるんだー!時間ごとに一本づつ発射される仕組みなんだけどさー………一本の毒は、そんなに濃くないんだよねー!」
「まだ…助かる可能性はある……!」
ノエルが毒針の仕組みをようやく詳しく説明する。それを聞いたケイジさんが、目に希望を宿しながらそう言った。
あ…………下からスカートの中、見えてないよね?
一応タイツとかは履いてるけれど、もし見えているのなら恥ずかしい。
「まっ、最大成人男性でも殺されるように設計されてるし……あ、そうそう!間違えてた!!次は二本連続で毒針が発射されるよ!!」
「なっ………!さっきと言ってることが違うぜよ…!!」
「あは、ごめんごめん!!あくまでAはQタロウの代わりだからさ、条件も厳しくなっちゃうんだよ。でもまあ、安心しなよ!二本の内一本はお手製の毒だからさ!」
何が安心出来ると言うのだろうか、この人形は。
下にいる人形を軽蔑した眼で見ると、それに気づいた人形が私に向けて馬鹿にしたような笑みを浮かべて舌を出す。
さては、製作途中で頭のネジの十本くらいを締め忘れられてしまったのだろう。
かわいそうに。
「何が安心できるって言うのよ!!………手製の毒とは、一体なんだ?」
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でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます!なんとか5月中に2章完結目指して頑張ります。笑 (2020年5月20日 23時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 何度もコメントすみません…今日更新多くて嬉しいです…!(( お体にはお気をつけて!これからも楽しみにしています! (2020年5月20日 22時) (レス) id: cc998c0500 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - しきさん» え?そう言ってくれて嬉しい… (2020年5月16日 7時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - え?表紙好き… (2020年5月16日 1時) (レス) id: 0c957ac632 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます…! (2020年5月14日 21時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でででででん | 作成日時:2020年4月28日 9時