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『はは、大丈夫ですよ。確かに見た目は大げさですけれど……そんな大した怪我じゃないので。』
ね、ハンナキー?
彼女の方を向いて同意を求めると、曖昧な表情で
“うう…”とだけ言った。
なんとも微妙な返事である。
もしや、嘘がつけないのだろうか。
彼女の微妙な返事について考えていると、ピピッと短い間隔の音が鳴った。おそらく毒針のタイマーだろう。
「うわ、時間ピッタリじゃん!!チェ、時間切れでテメーが絶望した様を見たかったのに。」
ノエルが私に向かってそう言った。
間に合って良かった。
もしも私が間に合わずにギンくんに毒針が刺された所を考えると……背筋が凍りつく。
「間も無く毒矢が発射されます。」
無機質な機械音声が、数秒後の未来を告げた。
「5」
「A姉ちゃ、ごめんなさ………ごめ…」
『謝らないの。大丈夫だって、私こう見えてもしぶといよ?』
泣きながら謝るギンくんに、安心させるように言った。
ああ、そんな顔しないで……出来れば、笑っていて欲しいなぁ。
でもまあ、ギンくんは優しいから仕方がないのかもしれない。
「4」
「A…………!!」
『……………大丈夫、大丈夫だって。さっき聞いたでしょ?この毒は遅効性…すぐには死なないよ。』
的より上にある鑑賞室から、サラがこちらを見ていた。やっぱり床から見るよりも、的からの方が鑑賞室が見やすい。
「3」
地面で、私を見ているQタロウさんとまた目が合う。
Qタロウさんは相変わらず泣いていて、私に押し付けてしまったことを酷く後悔しているのだろう。
喉の奥から言葉にならないうめき声が聞こえる。
「2」
脅して場所を無理に変わったのは申し訳ないとは思うけれど、後悔はしていない。
だってそうでもしないと、ギンくんもQタロウさんも苦しい思いをするだけだから。今も苦しいだろうけれど、ここに居た時よりもマシだと思う。
「1」
どれくらい、もつかなぁ………私。
「0」
ゼロ。
その音と同時に、私に向けて毒針が発射される。
部屋には、Qタロウさんのうめき声と、カンナちゃんの押し殺した泣き声と、後ろでギンくんがすすり泣く声だけが響いていた。
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でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます!なんとか5月中に2章完結目指して頑張ります。笑 (2020年5月20日 23時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 何度もコメントすみません…今日更新多くて嬉しいです…!(( お体にはお気をつけて!これからも楽しみにしています! (2020年5月20日 22時) (レス) id: cc998c0500 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - しきさん» え?そう言ってくれて嬉しい… (2020年5月16日 7時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - え?表紙好き… (2020年5月16日 1時) (レス) id: 0c957ac632 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます…! (2020年5月14日 21時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でででででん | 作成日時:2020年4月28日 9時