検索窓
今日:58 hit、昨日:28 hit、合計:159,432 hit

138 ページ41

『はは、大丈夫ですよ。確かに見た目は大げさですけれど……そんな大した怪我じゃないので。』





ね、ハンナキー?

彼女の方を向いて同意を求めると、曖昧な表情で
“うう…”とだけ言った。


なんとも微妙な返事である。

もしや、嘘がつけないのだろうか。




彼女の微妙な返事について考えていると、ピピッと短い間隔の音が鳴った。おそらく毒針のタイマーだろう。





「うわ、時間ピッタリじゃん!!チェ、時間切れでテメーが絶望した様を見たかったのに。」





ノエルが私に向かってそう言った。



間に合って良かった。

もしも私が間に合わずにギンくんに毒針が刺された所を考えると……背筋が凍りつく。





「間も無く毒矢が発射されます。」





無機質な機械音声が、数秒後の未来を告げた。





「5」


「A姉ちゃ、ごめんなさ………ごめ…」


『謝らないの。大丈夫だって、私こう見えてもしぶといよ?』





泣きながら謝るギンくんに、安心させるように言った。

ああ、そんな顔しないで……出来れば、笑っていて欲しいなぁ。
でもまあ、ギンくんは優しいから仕方がないのかもしれない。





「4」


「A…………!!」


『……………大丈夫、大丈夫だって。さっき聞いたでしょ?この毒は遅効性…すぐには死なないよ。』





的より上にある鑑賞室から、サラがこちらを見ていた。やっぱり床から見るよりも、的からの方が鑑賞室が見やすい。





「3」





地面で、私を見ているQタロウさんとまた目が合う。

Qタロウさんは相変わらず泣いていて、私に押し付けてしまったことを酷く後悔しているのだろう。

喉の奥から言葉にならないうめき声が聞こえる。





「2」





脅して場所を無理に変わったのは申し訳ないとは思うけれど、後悔はしていない。

だってそうでもしないと、ギンくんもQタロウさんも苦しい思いをするだけだから。今も苦しいだろうけれど、ここに居た時よりもマシだと思う。





「1」





どれくらい、もつかなぁ………私。





「0」





ゼロ。

その音と同時に、私に向けて毒針が発射される。


部屋には、Qタロウさんのうめき声と、カンナちゃんの押し殺した泣き声と、後ろでギンくんがすすり泣く声だけが響いていた。

139→←137



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (147 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
179人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます!なんとか5月中に2章完結目指して頑張ります。笑 (2020年5月20日 23時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 何度もコメントすみません…今日更新多くて嬉しいです…!(( お体にはお気をつけて!これからも楽しみにしています! (2020年5月20日 22時) (レス) id: cc998c0500 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - しきさん» え?そう言ってくれて嬉しい… (2020年5月16日 7時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - え?表紙好き… (2020年5月16日 1時) (レス) id: 0c957ac632 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます…! (2020年5月14日 21時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:でででででん | 作成日時:2020年4月28日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。