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一度止めてしまった腕を動かし、マッチ棒を箱の側面に素早くこすりつけた。
シュッと音を立てて、マッチ棒に火が灯る。
『……………バイバイ。』
そう一言、お別れを口にして。
私は火のついたそれを、手紙の上へ放り投げた。
音も立てずに、お兄ちゃんが焦げ茶色に変色して溶けていく。やがて時間が経ち、全てが燃え尽きチリとなった頃。
ハンナキーが私に向けて言った。
「……場所の交換を承りました。Aさんの服では毒針を防いでしまう可能性があるので、どちらかの腕を捲ってください。」
それを聞いて、私は迷わず右腕をまくった。
一昨日、アリスさんに掴まれた方の腕だからである。
丁寧に治療されたボロボロの私の腕が、空気に触れる。
するとまた辺りは目が眩む程の明るさとなり、前にクッションに落ちた時に感じた浮遊感に捉われる。
しばらくして眩しさがなくなり、そっと目を開ける。
気づけば背中には震えているギンくんがいた。
後ろを振り返れば、先程まで自分が立っていた場所にQタロウさんが立ちすくんでいる。
「A、姉ちゃ………」
「う、うう……うぅぅ……すまねえ、すまねえ………A…………」
ああ、ごめんなさい。
そんな顔をして欲しくて、場所を変わったわけじゃないのに。
私と場所が交換されたQタロウさんは、泣いていた。
後ろを向くのをやめて、目的であるボタンに視線を向ける。
『ごめんね、変わるの遅くなって。怖かったよね…ごめんね、ギンくん。』
「………うぁ、A姉ちゃん……A、姉ちゃん………。」
今まで私の想像を絶する程怖かったのだろう。私が的越しに声をかけると、声を詰まらせながら泣いていた。
まだこんなにも小さい子供なのに。
もしも手が自由なら、頭を撫でてあげたい。
すすり泣く声を聴きながら、指を動かして目の前にあるボタンを押す。すると的が機械音を立てて百八十度回転した。
回転すると、先程まで自分が居た場所がよく見えるようになる。
みんなは、なんとも言えない顔で私を見ている。私はこういう時どうすれば良いか分からなかったので、とりあえず笑顔を浮かべておいた。
「あの怪我…そんなに、酷かったのか………?」
アリスさんが、私の右腕を見ながらそう言った。想像以上にボロボロだったのか、顔を歪めている。
多分一昨日の事を気にしているのだろう。そんなに気にしなくても良いのに、なんだか申し訳ないなぁ。
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でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます!なんとか5月中に2章完結目指して頑張ります。笑 (2020年5月20日 23時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 何度もコメントすみません…今日更新多くて嬉しいです…!(( お体にはお気をつけて!これからも楽しみにしています! (2020年5月20日 22時) (レス) id: cc998c0500 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - しきさん» え?そう言ってくれて嬉しい… (2020年5月16日 7時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - え?表紙好き… (2020年5月16日 1時) (レス) id: 0c957ac632 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます…! (2020年5月14日 21時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でででででん | 作成日時:2020年4月28日 9時