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マッチの箱を両手で持ち、感謝を述べるために左を向く。




『助けてくれて、ありがとう。』




膜の向こう側にいるみんなを見て、自然と頰が緩んだ。

表情の種類で言えば、カイさんの最後の笑顔と近しいかもしれない。
まあ、見えないから何とも言えないが。





「ふん、別に見てて腹が立っただけだ。」





素直じゃないアリスさん。





「Aさんが苦しんでるのを見るの、嫌だったんです………。」





目尻が赤くなったカンナちゃん。

嬉しいけれど、もうこれ以上心配をかけるわけにはいかない。





「………それじゃあ始めるよ。」





最初とは打って変わって不貞腐れたノエルが、最後のアトラクションの開始の合図を口にした。

頑張ろう、私が二人の代わりになる。
彼処へ…的へ、行かないと。


的に縛られた少年と大男を見て、マッチの箱を持つ手に力が入った。









まず私がするべきことは、Qタロウさんの説得だ。
Qタロウさんが許可しなければ、私が手紙を燃やしても意味がない。

何とかして毒針の発射までに説得して変わってもらわなければ。


とりあえず受け取ったマッチの箱の中身を確認すると、一本だけマッチが入っていた。燃やす時に、変な失敗はできないな。




上にある鑑賞室の方からは、レコさん、ナオさん、サラが話し合う声が聞こえてくる。あの三人もさっき、私を心配して上から覗き込んでくれていた。

………嬉しいなぁ。





「A姉ちゃぁん………。」





ギンくんが、薄っすらと涙の膜を貼りながら私の名前を呼んだ。

大丈夫、助けるからね。


さっきはできなかった笑顔を、頷きながら少年に向けた。
一昨日一緒に入った、アトラクションの時のように。

少しだけ、ギンくんの目から恐怖の色が薄まった。





「三人で考えれば…きっと、どうにかなるハズです!!」


「頼むぜよ、お前ら…!!なんでもいい…!!閃いてくれ……!!」


「制限時間は短いよー。せいぜいがんばってねー。」





機嫌が直ったのか、直ってないのか。
それはよく分からないが、落ち着いた様子のノエルが抑揚のない声で言い放った。



おそらくQタロウさんは、ギンくんと交換することも躊躇うし、私と交代することも躊躇う。生きようと必死にもがいているけれど、そもそもあの人は子供に優しい。

はい、どうぞ。と簡単に私に立場を譲ることはしないだろう。



さて、一体どうしたものか。

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でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます!なんとか5月中に2章完結目指して頑張ります。笑 (2020年5月20日 23時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 何度もコメントすみません…今日更新多くて嬉しいです…!(( お体にはお気をつけて!これからも楽しみにしています! (2020年5月20日 22時) (レス) id: cc998c0500 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - しきさん» え?そう言ってくれて嬉しい… (2020年5月16日 7時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - え?表紙好き… (2020年5月16日 1時) (レス) id: 0c957ac632 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます…! (2020年5月14日 21時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:でででででん | 作成日時:2020年4月28日 9時

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