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「ん?ちゃんとあげただろ?テメーの“お兄ちゃん”からの大事な大事な手紙。そう言えばテメーの家にある“お兄ちゃん”の遺品それしかねーんだっけ。
手紙しかないなんて、かわいそー。
でもまあ、あの二人を救うためならどうってことないよね!」
思わず、手紙の入ったスカートのポケットの上に手を置いた。
そう、そうなのだ。
お兄ちゃんは生前に全て、私達にバレないように私物を捨てていた。残っているのは部屋の中に配置された勉強机と、ベッドと、カーテンだけだった。
あんなに大事にしていた腕時計も、靴も、服も、修学旅行のお土産に買ってた厨二臭いストラップも、何一つ残っていなかった。
昔三人一緒に川でとってきた、綺麗な石すら、全部。
写真ですらお兄ちゃんが写っている部分だけが切り取られ、あの家からお兄ちゃんが生きていた痕跡の殆どが消滅していた。
唯一残っていたのは、遺書だけ。
それだって、だいぶ前にお母さんに取り上げられて……ようやく一昨日手に入ったのに。
昨日見つけた優しいお兄ちゃんからの、本当の言葉も書いてあるのに。
「ははは、ほら。マッチもあげるからさ!助けたいなら、その大事な手紙、燃やしなよ!!
………テメーの“お兄ちゃん”が酷いメッセージの裏に隠した、その優しい言葉が書いてある手紙をさ!!」
『…………』
私の足元に、ノエルから投げられたであろうマッチの箱が滑り込んできた。
拾おうと思っても、体が動かない。
二人を、助けたいのに。
手紙よりも人の命の方が大事なのは、頭では分かっているのに。
足が、腕が、動かない。
「ひ、卑怯ぜよ!!」
「はー?むしろこっちはテメーに大サービスしてあげてんのに、何が卑怯なの?」
「サービスだと!?」
「そうそう、テメーは子供二人を見殺しにして安全な場所で見守れるんだ!これ以上のサービスはなかなかないよ。
なんてったって、ギンの身代わりになる権利をAに押し付けられるんだからさ!」
続けてノエルが、ボタンを二回押せば強制的にQタロウさんが手紙を燃やせると言った。
私が彼処へ行くには、まずQタロウさんが私に変わっても良いという許可を出す。それから私かQタロウさんが手紙を燃やせばそちらへ行ける。
くれぐれも順番を間違えるなよ、と人形に念を押された。
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でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます!なんとか5月中に2章完結目指して頑張ります。笑 (2020年5月20日 23時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 何度もコメントすみません…今日更新多くて嬉しいです…!(( お体にはお気をつけて!これからも楽しみにしています! (2020年5月20日 22時) (レス) id: cc998c0500 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - しきさん» え?そう言ってくれて嬉しい… (2020年5月16日 7時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - え?表紙好き… (2020年5月16日 1時) (レス) id: 0c957ac632 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます…! (2020年5月14日 21時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でででででん | 作成日時:2020年4月28日 9時