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クリアチップを受け取った後、Qタロウさんが私を見て名前を呼ぶ。
何故だろう、上から私を見下ろす形で話しているのに、全く威圧感を感じない。それどころか、Qタロウさんが小さく見えるような…そんな錯覚すら覚える。
「さっきの話の続きじゃ……オレは、ここから出たら………孤児院のアイツらに見せてやりたいんじゃ。」
色々な感情が混ざった笑みを浮かべながら、彼は壁の方を見た。
「両親が居ないヤツにだって、夢を見ていいんだって…夢を叶えられるんだって…オレが一軍のマウンドに立って、アイツらに見せてやりたいんじゃ……」
その言葉を聞いた私の心は複雑だった。
両親がいても……そんな人たちがいたって…………
真っ黒でドロドロとしたソレを胃の中に押し込めて、また顔を作った。
『すごい夢……はは、流石Qタロウさんですね。私の夢とはまるで次元が違います。』
「……そんなことはねえ。どんな夢だって、スゲー夢ぜよ。」
そういうと、頭を撫でられた。
大きな手でグシャグシャと髪を乱されながら、力強く撫でられる。その度に頭が揺れるが、不思議と不快な気持ちにはならず、むしろ心地良かった。
きっと父親に撫でられる子供って、こんな気持ちなのかな。
幼い頃欲しがったそれは、とても心地が良い。
そしてさっきまで私の胃の中にいたソレも、新しく湧いた気持ちに溶かされて消えていった。
「さっきは……すまなかった……」
『大丈夫ですって、そんなに気にしないでください!……結局Qタロウさん、踏みとどまってくれたんでしょ?また一緒に頑張りましょう!』
「……ああ。」
私の頭から手が離されたので、それとなく髪を手櫛で直す。
ようやく綺麗に直ると、放送がかかった。
《ピンポンパンポーン!!おーい、テメーら!オレの話ちゃんと聞いてねー。用があるから今すぐロビーに集まれよー早くしろよなー。ピンポンパンポーン。》
「な、なんじゃあ?用って…」
『分からないですけれど、とにかく行きましょう。』
自分でピンポンパンポーン、って言うのはどうなんだろうと思いながら、二人でロビーへと向かった。
私達がロビーに行くと、サラが既にノエルと一緒に居た。他の人達はまだ来ていないらしく、しばらく待ち続けるとみんな揃った。
なんだろう、何か嫌な予感がする……
早まる心臓の音がはっきりと耳に届いて、それがとても気持ち悪かった。
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でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます!なんとか5月中に2章完結目指して頑張ります。笑 (2020年5月20日 23時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 何度もコメントすみません…今日更新多くて嬉しいです…!(( お体にはお気をつけて!これからも楽しみにしています! (2020年5月20日 22時) (レス) id: cc998c0500 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - しきさん» え?そう言ってくれて嬉しい… (2020年5月16日 7時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - え?表紙好き… (2020年5月16日 1時) (レス) id: 0c957ac632 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます…! (2020年5月14日 21時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でででででん | 作成日時:2020年4月28日 9時