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全ての紙を炙り終えて、椅子に座った。


手紙は机の上に置いて、姿勢悪く手紙に目を通す。

本当は手で持ちたかった。けれど手が震えてしまって、文字が読みにくかったので仕方なく置いたのだ。


ケイジさんから受け取った時やギンくんに聞かれた時、大丈夫だのよく分からないだのと言ったが、本当は傷ついていたのかもしれない。


だって、今こんなにも嬉しい気持ちなのだから。




早まる心臓を手で抑え、文字を読む。





《Aへ。




A、さっきは八つ当たりして悪かった。ごめんな、志望校とは違う大学の受験を強制させられて 勉強に身も入らないから結局二浪もして ごめん。俺はもう気が触れてしまっているんだ。

あの人達は絶対行けるって信じてる、なんて言うけどさ。無理 無理 無理だ。》





『お兄ちゃん……』





続きを読み進めていくと、この文を隠した理由が書かれていた。あんなに酷い文を書いたのは、あの人達に見つからないようにするためだと。

それでも、いくらカモフラージュの為とは言え、あんなに酷いことを書いて悪かったと書いてあった。


ごめんな。


そう、何度も私に謝まっていて……面影を感じた。





《A、早くあの家から逃げるんだ。おれは知らないけれど、Aはヒマリが今住んでいる場所を知ってるんだろ?

だったら、ヒマリをたよって早くあの家から逃げるんだ。

いいか、できるだけ遠くに、早く逃げるんだ。急がないと はやく 近いうちに連れて行かれる。A、お前はつれていかれるんだ。


だから、早くにげてくれ。ごめんな、守ってやれなくて おれ自分かってだからさ。もうだめなんだ。これいじょうは、 もう

ごめんな。これからのAの人生がしあわせになるように、いまも むこうにいっても、いのってる。

ごめんな。



にいちゃんより。》





『………知って、たの?このこと……ねえ、お兄ちゃん……三ヶ月以上前から………?』





知っていた?


全てを読み終えた後、残っているのは食べきれない量のケーキと、溶け消えそうなろうそく。


この手紙をお母さんに取られなければ、もっと早くこのことが知れていたのに。そう思ったけれど、結局知っていても結果は変わらなかっただろう。

きっと知ったところで、誘拐犯からは逃げ切れなかった。



最後は平仮名だらけになってしまった手紙を横目に、大きなホールケーキを見てため息をついた。

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でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます!なんとか5月中に2章完結目指して頑張ります。笑 (2020年5月20日 23時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 何度もコメントすみません…今日更新多くて嬉しいです…!(( お体にはお気をつけて!これからも楽しみにしています! (2020年5月20日 22時) (レス) id: cc998c0500 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - しきさん» え?そう言ってくれて嬉しい… (2020年5月16日 7時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - え?表紙好き… (2020年5月16日 1時) (レス) id: 0c957ac632 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます…! (2020年5月14日 21時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:でででででん | 作成日時:2020年4月28日 9時

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