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「血の出た所にこうして…このように使うんです!どうですか?危ない薬じゃないでしょう?」
薬を垂らすと、傷が綺麗にふさがっていった。
まるで魔法のようで、素直に現代医療はすごいんだな、と幼稚な感想が頭に浮かぶ。
……いいな、その薬。
ずっと同じマスクをつけているのも不潔だし、後で使わせてもらおう。
「………なるほどねー、自分の体で証明するとは…わかったよ。」
「えへへ…」
薬の効果を分かってもらえたハンナキーは、満足そうに笑って薬をギンくんの足に垂らす。すると、先ほどと同じように傷口がふさがっていった。
傷がふさがるのを確認したハンナキーは、また医務室の隅の方へ移動して行った。
「おまわりさん…A姉ちゃん…」
ハンナキーが手に持っている薬に目を奪われていると、下の方から小さな声が聞こえてくる。しゃがんでギンくんの方を見ると、何かを言いたそうにしている。
どうしたの
そうケイジさんが言うと恐る恐る、といった感じで口を開いた。
「これ、サラ姉ちゃんに渡しても良いかニャン…?」
そう言って少年のポケットから出てきたものは、小さい犬のマスコットだった。確かジョーくんが胸ポケットに入れていたものだ。
今のサラちゃんに見せても良いもの…だろうか。
遺品は凄い。それを持っているだけで、故人が簡単に思い出せるから。私だって遺品をもらった時は、母に奪われるまでずっと大事に持っていた。
ただ、今のサラちゃんに渡して吉と出るか凶と出るかは五分五分だ。
ケイジさんは凶と判断したらしく、渡さない方が良いと言った。
『……渡してみても、良いんじゃないですか?』
「え……?」
何か細工がしてある遺品じゃないし……持っているだけで、心の支えになるかもしれない。
もちろん幻影は襲ってくると思う。ただ…デメリットより、メリットの方が大きいんじゃないかと思った。
ケイジさんには驚かれたけれど。
「あの…私に何か…?」
「ニャーン!?何でもないワン!!」
渡すかどうかを話し合っていると、突然サラちゃんが此方に寄って来た。小声で話していたから、逆に気になってしまったらしい。
ギンくんの反応に訝しげにするサラちゃんと、咄嗟に彼女の死角にマスコットを隠したギンくん。
ごめん、ギンくん。ケイジさん。
ギンくんの手からマスコットを奪い取る。
「ニャッ!?」
『これ…ジョーくんの、だよね?』
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でででででん(プロフ) - ぁぃぅぇぉさん» (ニッコリ) (2020年8月19日 6時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
ぁぃぅぇぉ - 待って最初のやつポルナレh...やっぱなんでもありません (2020年8月19日 5時) (レス) id: 4f6210d2fe (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - キミ死好きさん» 分かってくれる人がここに…!!ありがとう。 (2020年4月22日 10時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
キミ死好き - まぁあの笑顔みたいな顔iPadの壁紙にしてるから分かるよ (2020年4月22日 10時) (レス) id: bf60227ed4 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - キミ死好きさん» レコの生存ルートで、アリスがボンゴを渡した時に発生する最後のイベントが本当に好きなので……ごめんなさい。 (2020年4月21日 9時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でででででん | 作成日時:2020年3月30日 19時