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レコさんと別れた後、自室に戻ってポケットからティッシュの塊を取り出した。そのまま洗面所に移動して、取っ手を横にひねって先程入手した種を水にさらす。
しっかりと水で洗った後、壁にかかっている備え付けのタオルで拭いた。
拭き終わった種を洗面所に置いて、今度は医務室に向かう。
医務室に入ると、ギンくんがソファーに座っている。けれども、ハンナキーの姿は見当たらない。
景品交換所の受付とは違って、いつも居るのに珍しいと思った。
『ねえ、ギンくん。ハンナキー知らない?』
「アイツ、さっきノエルに引きづられながら出てったニャン。」
『そ…そっか……』
ハンナキーがノエルに引きづられて行く光景が容易に想像できて、苦笑した。
彼女ならきっとすぐに戻ってくるだろうし……
しょうがない、戻ってくるまで待とう。
待っている間ずっと立っているのも疲れるので、私もソファーに座ることにした。私が座ると、右隣に座っている少年にじっと見られる。
少し居心地が悪いと思っていると、斜め下から話しかけられた。
「A姉ちゃん……ケガしてるニャン?」
『……え?怪我?』
「ニャア。メインゲームの後、A姉ちゃんから血と……何か変なモノが混ざった匂いがしたワン。けど……今は消毒液の匂いニャン。」
曇りのない緑色の目には、普段と様子が変わらない私が映っている。
なんと、あの時に何か言いたそうにしていた事は、コレだったらしい。今まで特に深く考えていなかっただけに、顔には出ていないものの……心臓が跳ね上がった。
ギンくんが嗅覚に優れているとは知らなかった。
これからは気をつけないとな。
『すごいね、ギンくん。匂いで分かるなんて。』
「へへへ……ボク、匂いを嗅ぎ分けるの得意ニャン。………あ、でも…ケガ、大丈夫ワン?何でケガしたニャン?」
このまま話が逸れることを願っていたけれど、駄目だった。こんな小さな子に話せるような内容でも無いので、適当に言い訳を取り繕うことにする。
『怪我は大丈夫だよ。ありがとう、ギンくん。何だっけかな…………確か…体育で転んじゃって、怪我したんだと思うよ。』
「ニャンであの薬使わなかったワン?」
あの薬…とはきっと、ハンナキーが実演して見せた細胞を活性化させる薬のことだろう。
『なんかね、あの薬ちょっとしかないらしくて………残念だったけど、私の時にはもう無かったの。』
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でででででん(プロフ) - ぁぃぅぇぉさん» (ニッコリ) (2020年8月19日 6時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
ぁぃぅぇぉ - 待って最初のやつポルナレh...やっぱなんでもありません (2020年8月19日 5時) (レス) id: 4f6210d2fe (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - キミ死好きさん» 分かってくれる人がここに…!!ありがとう。 (2020年4月22日 10時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
キミ死好き - まぁあの笑顔みたいな顔iPadの壁紙にしてるから分かるよ (2020年4月22日 10時) (レス) id: bf60227ed4 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - キミ死好きさん» レコの生存ルートで、アリスがボンゴを渡した時に発生する最後のイベントが本当に好きなので……ごめんなさい。 (2020年4月21日 9時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でででででん | 作成日時:2020年3月30日 19時