ヒトリゴト。 (ページ6)

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薮side

｢わっ、伊野ちゃん大丈夫！？｣

今日も誰かが伊野尾を心配する声が楽屋に飛び交う。

伊野尾は昔からそうだった。
大きく体調を崩すことはあんまりなかったけど、毎日どこか調子が悪い。
そんなやつだった。

昔はちゃんと心配してた。

『昔』はね。

｢薮ちゃーん！｣

｢どした～…って伊野尾大丈夫か！？｣

我ながら思うよ。白々しい。
大ちゃんに呼ばれる前から伊野尾の様子がおかしいのには気づいてたし。

今は心配してる『フリ』
だって伊野尾はミュンヒハウゼン症候群っていう病気だから。

これは俺以外気づいてない。
それでいい。

健気な伊野尾を知ってるのは俺だけでいい。

｢くくっ、…｣

｢なに、薮ちゃん………｣

｢んー、いや。伊野尾って可愛いなぁって思って｣

｢なに今更…｣

違う、違うよ大ちゃん。
俺が言ってるのはそーゆー可愛いじゃない。
俺じゃないとわからない可愛いだから。

………

｢ほんとに1人で帰れるか？俺送っていくぞ？｣

｢んーん、だいじょぶ。今日も迷惑かけてごめんね…｣

｢迷惑じゃねぇから。ほんとに気をつけて帰れよ？明日無理そうだったらちゃんと連絡して休むこと。分かった？｣

｢わかったよぉ、、じゃーね、ありがとう｣

｢ん。おやすみ。｣

なぁ、伊野尾。そろそろ新しいのにしようとか考えてるんだろ？

カバンの中に盗聴器が入ってるなんて知らない、可愛いかわいい伊野尾。

マンションの前でイヤホンをすればカチカチと刃が出る音が聞こえてくる

あぁ、そうきたか。

｢あっ、……やぶっ、｣

｢ふふっ、はははっ……ほんっと、可愛いやつだなぁ…お前は｣

俺の事しか考えられない
可愛い伊野尾。
いや、可哀想か。

｢伊野尾？やっぱ心配だから来たけど………っ、伊野尾っ！！｣

今日も可愛くて哀しくて、可愛そうなこいつにニセモノの涙を流す。

______サイコウニカワイイアナタノタメニ

end