ヒトリゴト。

＊ ページ40

伊野尾side



「おーい、伊野尾さん？大丈夫？」



「へ、なにが？」



「いつも以上にぼけーっとしてましたよ」



「いつも以上には余計だろ」



「んで？なにがあったわけ？」



「べっつにぃ。光に喧嘩したの？って聞かれただけ。」



「……なんて言ったの？」



「ん〜、別に喧嘩はしてないよぉ〜みたいな？」



「あっそ。」



「聞いてきたくせに興味ねぇのな」





喧嘩なんて滅多にしないくせにこういう時は決まって喧嘩口調なのはなんでだろう。
それでも喧嘩にならないのはもっとなんでだろう。





「なぁ、」



「なに」



「そろそろ言ってもいいんじゃねぇの？」



「なんで。そもそも秘密にしようって言ったの薮じゃんか」



「まぁそうなんだけど。そろそろ俺が限界っていうか」



「どういうこと？」





相変わらず薮の話は結末が見えない。
付き合い始めて最初に内緒にしようって言ってきたのは薮なのに、なんで薮が限界なわけ？
訳わかんない




「いや、だってさ最近高木とかゆうととかと距離近いしさ、心配なわけよ」




「……俺が好きなの薮だけなんだけど。」



「分かってるけどさ、お前無防備だしひ弱だし」



「ひ弱言うな」



「それに……」





“どんどん伊野尾が綺麗になっていくから”





タイミングよく赤信号で止まっていた車。
急に耳元に寄せられた薮の顔。そして囁かれた小恥ずかしいクサイ台詞。






「……ばかじゃないの」





多分俺の顔真っ赤だ。
触んなくてもわかるぐらい顔が熱い。





「そういうわけなんで、そろそろ公表しねぇ？」



「……しない。俺しか知らない薮でいてほしいから。だめ」



「あ〜〜、もう……そういうとこ。直さなくていいけど俺の前以外ですんなよ」



「意味わかんないけど分かった。」



「それ分かってねぇよな？」



「うるさい……ってか今の右！！」



「あーーっ！！！」






この幸せは誰にも見せたくないし、教えたくない。





もう少しナイショのハナシを続けよう。









end

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