ニガテな上司（センラ）

恐怖 ページ29

苦しい…喉がつぶされそう…！

「ら、たく…っ」

苦しさのせいで、生理的な涙が次々に溢れてくる。

「これ以上怖いめにあいたくなかったら、大人しく乗れよ。」

「〜っ」

もうだめだ。
こんなのかないっこない。

そう思ったとき。



(ゴッ…！




浦田くんが急に、本当に突然。
私の身体から離れた。

いや、正しくは、誰かが浦田くんを殴り飛ばした。

(ずしゃぁっ

痛々しい音をたてて、地面に転ぶ浦田くん。

「げっほ、ごほっ」

私はというと、気道に空気が入ってきたことで、咳が出てきて止まらなくなった。

「大丈夫か！？」

「げほ……え？」

顔をあげると、そこにいたのは…センラさん。

「せん…らさん…」

「なにもされてへん！？怪我は！？」

「あ、大丈夫です…」

どうして…
どうしてここに来てくれたの…？

「よかった…何もなくて…」

そういうセンラさんの息はあがっていて。

ワイシャツも、いつも綺麗にセットされている髪も汗だくだった。

「ッてぇなぁ…何すんだよ…」

「！」

そんな私たちふたりの横で、浦田くんは起き上がりながらセンラさんを睨みつけていた。

口が切れたのか、端から血が滲んでいる。



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