75話 ページ25
幸福亭。
それは、俺たちを結んでくれた、まさに幸福を呼び寄せるような場所。
その店の暖簾が、目の前で静かに畳まれていく。
JH『…』
『うっうっ…』
JH『そんな泣くな。目腫れるよ』
『だって…！お店なくなっちゃうなんて…悲しいよ』
10月上旬。秋が強まってきたソウル。
寒さに慣れていないのか、早くも薄手のコートを着ているAの肩をさすれば、
シャッターの閉まった店から目を反らすように俯いてしまった。
…その知らせがやってきたのは、俺たちが結ばれた直後だった。
(ごめんねぇ。やっぱり腰の具合が良くなくてさぁ。しばらく安静にしないといけないみたいなんだ)
それから数ヶ月。アジュンマのいない店を、マスターとAだけで切り盛りしていた。
あまりにも大変だからと、たまに俺も手伝ったりしたけど、気づけばいまの状態だった。
『ジェヒョナ、来てたのか』
JH『マスター…アジュンマは？大丈夫そう？』
『だいぶ良くなったよ。口は元気だから煩いくらいだ』
JH『よかった。ほらA、そんな泣かないの』
『だって幸福亭…私がちゃんとフォローできなかったから、無くなっちゃった…！』
マスターの顔を見て、より一層声を震わせながら泣くA。
ひたすら、ごめんなさいと言い続ける姿は、見ていてとても辛かった。
『Aちゃん』
『はい…』
『実はね、君が店に初めてやって来る前、店を畳もうかって家内と話をしていたんだよ』
JH『え！そうなの！？』
初耳なんだけど、と驚けば、言ってないからな。と笑うマスター。
マジかよ。
『ジェヒョニも仕事が忙しくなってきたようだし、もともと店に客は入らないしね』
『そんな…』
『でも、そんな時に君が来た。アルバイトさせてくださいって。俺の作ったメシを美味そうに食ってくれる日本人の女の子だ。１０年ぶりに、やる気がわいたよ』
『アジョシ…』
『楽しそうに働いてくれたし、Aちゃんがきっかけで客も随分増えた。忙しいときは、店の席が全部埋まったよな』
JH『そうなんだ…あんなに人気なかったのに』
やージェヒョン。と目線で訴えてくるマスター。
でも、最後にチゲ、食いたかったなぁ。
『だから、店を改装することにしたんだ』
JH『…ふーん。って、えええ！！？』
『かいそう…？』
今よりもっと小さな店舗にして、もう一人従業員を雇ってさ。
家内には、笑ってくれるだけでいいから、レジに座っててもらおうと思うんだ。
そんな店に、するつもりだよ。
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smiley_heram(プロフ) - うわわわわわ！めちゃくちゃキュンとして思わず泣いちゃいました…本当にいつも感動をありがとうございます！いつも応援してます！ (2019年1月3日 17時) (
レス) id: 4d5c582579 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - やったー！大好きなお話だったので、続編嬉しいです！！楽しみにしてまーす( ^ω^ ) (2018年10月30日 21時) (レス) id: 9488cd6895 (このIDを非表示/違反報告)
メェネェ(プロフ) - とても好きな作品なので削除はつらいです。 (2018年10月27日 23時) (レス) id: f6ab9f70c2 (このIDを非表示/違反報告)
さーちゃん(プロフ) - このお話に出会ってからNCTを知ることができました。完全に削除するんじゃなくてパスワード限定公開とかにはしませんか？？このお話は私の精神安定剤です。わがままですいません。 (2018年10月26日 19時) (レス) id: fabce44eac (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - 続編、番外編とても楽しみにしていたので残念です。何回も読み直したり楽しく拝見していたのでシリーズごと削除されるとのことでショックです…今後書き直して再度アップすることもないのでしょうか？ANAさんの作品が好きなので悲しいです。でもこれからも応援します。 (2018年10月26日 15時) (レス) id: da6d9d40c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ANA
| 作成日時：2017年10月3日 14時
