第434話 天の岩戸は内から開く ページ10
その日の夜。
『小狼』はソファの肘置きに腰掛け、サクラとファイのいる部屋の扉をじっと見つめていた。
帰宅してすぐにサクラはファイと自室に行ってしまい、そのままずっと出てこない。
加えてAも、モコナに昼ご飯を作ってからというもの引きこもり状態なのだという。
最近の彼女はこのパターンが多い。
いつもなら帰ってきた『小狼』たちを迎えるためや夕食を作るために何度か部屋を出てくるのだが、今日はそれすらもなかった。
だからテーブルの上にはファイが作った夕食が一人前だけ残っている。
誰のものか、なんて聞くまでもないことだった。
「酒、飲めるのか」
いつの間にか近くに来ていた黒鋼からの、唐突な問いかけ。
考え事をしていたため、それが自分に向けられたものであると『小狼』が認識するのには少々の時間を要した。
「もう一人のおれが飲めたんだったら……」
「おまえは飲めるのかと聞いてるんだ」
その返答に『小狼』は驚き、そして理解した。
この人も彼ではなくちゃんと自分を見てくれている。
それは嬉しいが、酒が飲めるのかという問いにはどう答えたらいいのだろう。
“彼”と違って自分は酒を口にしたことなんてないし。
悩んだ末に「分からない」とだけ返すと、黒鋼は酒の入った小さなグラスを自分に押し付けてきた。
そのままソファにどっかりと腰を下ろし、今度は自分用のグラスに酒を注ぐ。
「うん！ 『小狼』飲んだらどうなるか、モコナ知りたいな！ 飲もう！」
今まで様子を見守っていたモコナが、ぴょんと跳ねて黒鋼の持つ酒瓶に飛びついた。
「酒瓶ごと飲む気かよ」
「そんなー、もちろんそのつもりだよ♡」
「返せ」
「いや♡」
瓶へ頬ずりするモコナに、黒鋼の額に血管が浮かぶ。
そのやりとりは場の空気だけではなく、知らず知らず『小狼』の心まで温めていたようで。
「……ありがとう」
気付けば小さな笑みと、そんな言葉が溢れていた。
「出来たー！！」
突如として響く歓喜の声。
のち、Aの部屋の扉が勢いよく開いた。
そこから出てきた彼女は顔全体で嬉しさを表現したような、輝かしい笑顔を浮かべている。
「飯も食わずにこんな時間まで、何してやがったんだてめえは」
「これ作ってたの！ やっと出来たんだ！」
興奮が抑えきれないという様子で、Aは何かを『小狼』たちに差し出す。
その手の中にあったのは色の違う石が一つずつ嵌められた、五つのアクセサリーだった。
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白野 - 最初から一気に読んでしまうくらいとても面白かったです！続きを楽しみにお待ちしています！ (2021年11月3日 22時) (
レス) id: 9415252d02 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - まめさん» コメントありがとうございます！ 1から10まで一気に！？ ありがとうございます、そしてお疲れ様です！ しかも読みやすいと言って頂けるとか重ね重ねありがとうございます！！ まだ28巻中の半分を超えたぐらいなので、これからもお付き合い頂けると幸いです！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - あゆさん» 長らく音沙汰なしでごめんなさい！ 色々あって時間を取れずにいましたが、完結させると豪語した以上は少しずつでもお話を書き続けていきますので！ 筆が遅い分内容も丁寧に……なるかは分かりませんが、よろしければこれからもお付き合いください！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - はじめから一気に読みました！！とても面白くてすいすい読めました！更新頑張ってください(* ´ ▽ ` *) (2020年5月12日 17時) (レス) id: dd4ecb1951 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 復帰(？)、おめでとうございます！ (2020年5月9日 18時) (レス) id: 3afd599366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝石 コハク | 作成日時：2019年4月15日 22時
