第431話 守りたいもの ページ7
「おやす……っうわ」
おまじないを終えて額を離すより先に、『小狼』の身体がグラリと揺れた。
受け止めようとAが広げた腕をすり抜け、彼の頭が着地したのはなんと膝の上。
行き場所をなくした手がその場に停止する。
だってこれはいわゆる、膝枕というものではないか。
「……えぇと」
重いとは感じないが少々、いやかなり照れる。
こんな時でなかったら「何故こうなった！！！」とかなんとか叫んでいたところだ。
しかしそれを実行したら、せっかく穏やかな寝息を立てている『小狼』を起こしてしまうし。
眠る彼から悪夢を見ているような様子が見受けられないので、そこはホッとしたけれど。
「おやすみ、『小狼』。いい夢みてね」
どうか、どうか。
今この時間だけでも、彼に安らかな眠りを。
『小狼』のあどけなく少年らしい寝顔を見つめながら、Aは切実に願った。
しかし翌朝。
うっかり『小狼』に膝枕した姿勢のままで眠ってしまったAは、
「足、痺れた……」
「……すまない」
申し訳なさそうな『小狼』に肩を借りて、移動を助けてもらう羽目になったのだった。
ちなみに。
二人が(足が)痛いやらすまないやら言いながら“Aの部屋”から出て来たため、それを目撃した黒白二人組があらぬ勘違いをしたとか。
Aと『小狼』がその誤解を解くのに結構苦労したとか。
そこらへんは完璧に余談なので割愛させてもらう。
『出逢うべきだった人なのに逢えない。手を伸ばしても触れられない。その「目」に映るのに届かない。己で選んだとしても辛い事には変わりはない』
『一度決めた事は覆さない。そういう所も血筋なのかな』
Aの部屋から自室に戻った『小狼』は片目越しに見た記憶として、目覚めたサクラは欠けた夢として、それぞれ同じ場面を回想する。
朝日に照らされる部屋の中、二人の脳裏に浮かぶのは台詞の主であるクロウ・リードの顔。
「今のは…夢？ それとも…記憶？ お父様…誰と話してたの……？」
「貴方の言った通りになったな、クロウ。けれど決めたことだ。たとえその心が戻らなくとも、必ず守ると」
さくら、と。
自分一人だけの時にしか使わない呼び名を口にした拍子、『小狼』の部屋のドアが外から叩かれる。
「飯が出来たそうだ。お前も早く来い」
「すぐに行く」
そう返事をすると足音が去っていく。
程なく漂ってきた匂いに台所に立つ“彼女”の様子を思い描きながら、『小狼』は部屋の扉を開けた。
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白野 - 最初から一気に読んでしまうくらいとても面白かったです！続きを楽しみにお待ちしています！ (2021年11月3日 22時) (
レス) id: 9415252d02 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - まめさん» コメントありがとうございます！ 1から10まで一気に！？ ありがとうございます、そしてお疲れ様です！ しかも読みやすいと言って頂けるとか重ね重ねありがとうございます！！ まだ28巻中の半分を超えたぐらいなので、これからもお付き合い頂けると幸いです！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - あゆさん» 長らく音沙汰なしでごめんなさい！ 色々あって時間を取れずにいましたが、完結させると豪語した以上は少しずつでもお話を書き続けていきますので！ 筆が遅い分内容も丁寧に……なるかは分かりませんが、よろしければこれからもお付き合いください！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - はじめから一気に読みました！！とても面白くてすいすい読めました！更新頑張ってください(* ´ ▽ ` *) (2020年5月12日 17時) (レス) id: dd4ecb1951 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 復帰(？)、おめでとうございます！ (2020年5月9日 18時) (レス) id: 3afd599366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝石 コハク | 作成日時：2019年4月15日 22時
