第471話 皇子二人 ページ48
こうして、双子の皇子は谷にある塔の上と下にそれぞれ幽閉されました。
罪人の捨て場という言葉通り、谷にはたくさんの死体が転がっています。
この場で生きているのは二人だけ。
魔力も使えず死ぬことも許されない絶望的な状況ですが、塔の下の皇子、否、少年は諦めませんでした。
塔の上に閉じ込められている方の少年と違って、彼は塔の外にいます。
だから谷を囲う塀をよじ登っての脱出を試みたのです。
何度失敗しても少年はめげずに挑戦を続けました。
「出るんだ、ここから。出れば魔力が使える」
魔力が効かないのは塔の周りだけ。
とにかく谷から出ることさえ出来れば、その身に宿る強大な力でもう一人も助けることが出来ます。
「大きくなれば皇の魔力を超えると言っていた。そしたら他の国へ。行くんだ、二人一緒に。ファイ！」
罪人の死体を壁際に集めて山のように積み上げながら、少年は大切な片割れの名を叫びました。
その声が届いたのか、塔の上でもう一人の少年が呟きます。
「……ユゥイ……」
壁を登ろうとしては滑り落ちるユゥイの姿を、塔から出られないファイはただずっと見ていることしかできませんでした。
ある日何故か、谷にいつもより多く死体が捨てられました。
この谷が罪人を捨てる場であるとはいえ、一度にこれだけの数が降ってくるのは今までに無いことです。
その日以降、谷に捨てられる死体の数は一気に増えました。
しかも降ってくる人々は皆、罪人が着せられる服を着ていないのです。
それを見た双子はヴァレリアに何かあったのかと不安になりましたが、谷へ落とされた彼らに国の状況を知る術はありません。
そしてまた別の日のことです。
この日もたくさんの亡骸が谷に捨てられましたが、一つだけいつもと違ったことがありました。
降ってきた死体の中に幼子を抱いた女性が混ざっていたのです。
ここは罪人を捨てる谷ですが、こんな幼い子供や女性が何の罪を犯したというのでしょうか。
「やっぱり何かあったんだ、この国に」
壁を登り外に出て、ファイと一緒に別の国へ行く。
けれどその前に、この国で何が起きているのかを確かめたい。
そしてもし、二人でヴァレリアの人たちに出来ることがあるのなら。
そう思いながら壁を登っていたユゥイでしたが、手が滑って下に落ちてしまいます。
その拍子、指先が何かに触れました。
見ると、傍の亡骸が手に巻物を握っています。
「……何か、書いてある？」
ユゥイはそれを手に取り、読みました。
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白野 - 最初から一気に読んでしまうくらいとても面白かったです！続きを楽しみにお待ちしています！ (2021年11月3日 22時) (
レス) id: 9415252d02 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - まめさん» コメントありがとうございます！ 1から10まで一気に！？ ありがとうございます、そしてお疲れ様です！ しかも読みやすいと言って頂けるとか重ね重ねありがとうございます！！ まだ28巻中の半分を超えたぐらいなので、これからもお付き合い頂けると幸いです！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - あゆさん» 長らく音沙汰なしでごめんなさい！ 色々あって時間を取れずにいましたが、完結させると豪語した以上は少しずつでもお話を書き続けていきますので！ 筆が遅い分内容も丁寧に……なるかは分かりませんが、よろしければこれからもお付き合いください！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - はじめから一気に読みました！！とても面白くてすいすい読めました！更新頑張ってください(* ´ ▽ ` *) (2020年5月12日 17時) (レス) id: dd4ecb1951 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 復帰(？)、おめでとうございます！ (2020年5月9日 18時) (レス) id: 3afd599366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝石 コハク | 作成日時：2019年4月15日 22時
