第459話 五つの意志 ページ36
『それにもう一人の小狼が来るにはまだ時間がある』
「サクラ、夢の中で寂しかったり辛かったりしてない？」
『……姫は独りじゃないわ。夢の中で出逢う者がまた未来を変える切っ掛けになる』
モコナを気遣った侑子の言葉に、夢の中の光景を思い返す。
美しくもどこか不思議な衣装のサクラと、シンプルな白の着物を着た四月一日。
もしかして侑子は二人が夢で逢っていることさえも知っているのだろうか、とかなんとか考えていた矢先、耳を疑いたくなるような言葉がAの耳に飛び込んできた。
『大丈夫よ。四月一日も消えていない。そしてあの子の未来も変わってきている』
「……どういう意味ですか、それ」
「誰だそいつは」
『今はまだ関わりのない話よ。今はね。だからAも落ち着きなさい』
そう言われても、知り合いのなんか不穏そうな話が聞こえて落ち着けるわけがない。
ないのだけど、ここでそれを追及すれば本来の話が進まなくなってしまうので、Aは仕方なく言葉を飲み込んだ。
『それで？』
「やっぱり急ぐのは体か」
「モコナも行く！」
「……なんだかんだでペンダントも渡しそびれちゃったしね。もちろん私も行くよ」
「おう」
Aとモコナの意志を確かめた黒鋼の視線が『小狼』に向く。
「おまえはどうする？」
「セレスに行く。おれを閉じ込めていた者が姫の次元の記憶が刻まれた体を欲しているなら、何をするか分からない」
これで四人。
残りは少し前から何も言葉を発していないファイだけだ。
そんな彼にモコナがぴょんと飛びついて「ファイ、一緒に行こう」と声をかけた。
「ファイと黒鋼と『小狼』とAとモコナ、みんなで5分の1ずつ対価を払って一緒に行こう。サクラを助けに」
「けれど……」
蒼い瞳を揺らがせるファイに向かって、『小狼』も口を開いた。
「……おれが知っていたのに何も言わなかったのは、さくら……姫が貴方を信じていたからだ。嘘をついていたとしても、その嘘ごと姫は貴方を信じてた」
その瞳も、言葉も、目を逸らすことができないほど真っ直ぐで。
ファイだけでなく傍で見ているAまで思わず息を呑んでしまう。
「あの時、貴方を頼むと姫は言った。だからおれも貴方を信じる」
「ファイが独りだったらサクラきっと悲しいよ。みんなと一緒だったら、サクラきっとすごくすごく喜ぶよ」
優しくモコナを抱きしめるファイ。
これで五人、だ。
「その前にぶん殴るけどな」
「させるわけないでしょうが」
「黒鋼、野蛮人！」
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白野 - 最初から一気に読んでしまうくらいとても面白かったです！続きを楽しみにお待ちしています！ (2021年11月3日 22時) (
レス) id: 9415252d02 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - まめさん» コメントありがとうございます！ 1から10まで一気に！？ ありがとうございます、そしてお疲れ様です！ しかも読みやすいと言って頂けるとか重ね重ねありがとうございます！！ まだ28巻中の半分を超えたぐらいなので、これからもお付き合い頂けると幸いです！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - あゆさん» 長らく音沙汰なしでごめんなさい！ 色々あって時間を取れずにいましたが、完結させると豪語した以上は少しずつでもお話を書き続けていきますので！ 筆が遅い分内容も丁寧に……なるかは分かりませんが、よろしければこれからもお付き合いください！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - はじめから一気に読みました！！とても面白くてすいすい読めました！更新頑張ってください(* ´ ▽ ` *) (2020年5月12日 17時) (レス) id: dd4ecb1951 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 復帰(？)、おめでとうございます！ (2020年5月9日 18時) (レス) id: 3afd599366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝石 コハク | 作成日時：2019年4月15日 22時
