第449話 急げ急げと急かされるままに ページ25
「一人で別の世界へ行くつもりなのか！？」
「……放して」
「おれがいるからか！？」
「違うの、貴方のせいじゃない。でも……行かなきゃ、間に合わない」
サクラの言葉で、ファイの脳裏にある記憶が蘇る。
「……まさか、サクラちゃん」
それはまだ彼が幼かった頃のこと。
雪の降りしきる世界に建つ塔。
死を願っていた自分に提示された二つの選択肢。
失われた大切な片割れ。
その代償に得た自由と命、それからーー
『もうすぐおまえを迎えに来るものが現れる。おまえはここから出られるだろう』
自分を掴んでいた黒鋼の腕から逃れると、ファイは制止を無視して盤の上へと上がる。
サクラを引き留めようとしていた『小狼』の手は、謎の力に弾かれた。
地上に落ちてきた彼が、盤上へ上がったファイに驚きの眼差しを向ける。
しかしファイは意に介さず、ただ頭上を見上げていた。
正確にはたった今、羽根を2枚取り戻したサクラの姿を。
『けれど、いつか。おまえ達がずっとそれぞれの場所に留め置かれた理由。その強大な魔力を凌ぐ者が目の前に現れたら、お前は』
足元に『小狼』の剣が転がってきた。
サクラの手を掴んだ際に、彼自らが手放したものだ。
ファイは迷いなくそれを拾い上げーー
『その者を、殺す』
サクラの身体を、剣で貫いた。
「なんて莫大な魔力……！！」
爆発のようなそれを感じた瞬間、Aは思わず拠点を飛び出していた。
まさか、この短期間に尋常でない量の魔力を二度も感知するだなんて。
一度目の『小狼』の時も驚かされたけれど、前に感じたことがあるから特に気にはしなかった。
問題は二度目。
「A！ 今の、ファイの魔力だったよね！？」
「うん、間違いない！」
一緒に着いてきたモコナが、ローブのフードから叫ぶ。
でも、どうして。
あれは魔法というより魔力の暴走に近かった。
ファイほどの優れた魔術師がそんな真似をするはずがないーーそこまで考えた時、最悪の可能性が頭を掠める。
まさかとは思うがあり得ない話ではない。
Aは黙って走るスピードを上げた。
しかし、
「A、前！」
いつの間にか焦りで視野が狭くなっていたらしい。
モコナの声で我に帰った時には、既にすぐ目の前まで車が迫っていた。
避けようにも道は狭い、逃げる場所なんて右にも左にもありはしない。
轢かれる。
数秒後の死を覚悟したその瞬間、誰かの声が耳に飛び込んできた。
「A、盾を張るんだ！！」
懐かしいその声に、自然と身体が動いた。
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白野 - 最初から一気に読んでしまうくらいとても面白かったです！続きを楽しみにお待ちしています！ (2021年11月3日 22時) (
レス) id: 9415252d02 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - まめさん» コメントありがとうございます！ 1から10まで一気に！？ ありがとうございます、そしてお疲れ様です！ しかも読みやすいと言って頂けるとか重ね重ねありがとうございます！！ まだ28巻中の半分を超えたぐらいなので、これからもお付き合い頂けると幸いです！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - あゆさん» 長らく音沙汰なしでごめんなさい！ 色々あって時間を取れずにいましたが、完結させると豪語した以上は少しずつでもお話を書き続けていきますので！ 筆が遅い分内容も丁寧に……なるかは分かりませんが、よろしければこれからもお付き合いください！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - はじめから一気に読みました！！とても面白くてすいすい読めました！更新頑張ってください(* ´ ▽ ` *) (2020年5月12日 17時) (レス) id: dd4ecb1951 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 復帰(？)、おめでとうございます！ (2020年5月9日 18時) (レス) id: 3afd599366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝石 コハク | 作成日時：2019年4月15日 22時
