第448話 決着 ページ24
はあはあと肩を上下させ呼吸を荒くするサクラ。
口元こそ笑んでいるが、眉間にシワを刻み頬に汗を伝わせているイーグル。
多大な精神力を消費したマスター二人の前で、視界を覆っていた砂塵が晴れてゆく。
果たして、駒の二人は盤上に立っていた。
先の一撃で全力を出し切ったのはマスターだけではなく駒たちも同じ。
『小狼』と機械人形は文字通り満身創痍だったが、それでもなお倒れることはなかった。
しかし、
「終わったな」
黒鋼が呟いた瞬間、一方の駒から力が抜ける。
ふっと後方に倒れ込んだその身体を受け止めたのはーーイーグルだった。
「貴方達の勝ちです」
そう、戦いは終わっていたのだ。
『小狼』たちの勝利という形で。
イーグルの言葉でその事実を理解した途端、『小狼』の意識が揺らぐ。
全身から力が抜け、がくりと膝をついたところで「小狼君！」というサクラの声が耳に飛び込んできた。
それから間も無く感じた身体を支えられる感覚に、知らず閉じていた目を開けば、彼女の心配そうな顔が瞳に映った。
「……有り難う、小狼君」
『小狼』は彼女の手に自分の手を重ね、礼に応える。
彼女に応えられたという満足感で、己の口角が上がっているのを自覚しながら。
「それから……」
次いでサクラは何かを言いかけたが、その後に言葉が続くことはなかった。
突如、上空から光が降り注ぎ、その光を背にして何かが地上へ降りてくる。
「チィ……？」
“彼女”の名を呼んだのは、ファイの困惑したような声だった。
「次元移動能力を備えた、この国唯一の機械人形です。“彼女”が貴方を他の世界へ連れて行ってくれます」
イーグルが説明するその最中にも、サクラの身体はふわりと浮き、“彼女”が差し出した手を取ろうとする。
しかし二つの手が重なろうとした瞬間、サクラが“彼女”へ伸ばしている手とは反対の手を誰かが掴んだ。
否、誰かなんて決まっていた。
一人で行こうとしたサクラを必死な顔で引き止めたのは、
「……小狼君」
激闘を終えたばかりで疲弊しているはずの、『小狼』だった。
その身体のどこに残っていたのかと聞きたくなるような力で、サクラの手を放さぬようきつく掴んでくる。
一方。
異変が起きているのは盤の上だけではなかった。
「チィの封印が解けた……」
表情を険しくしたファイが見上げる先、“彼女”に呼ばれるように、共鳴するように、“彼女”と瓜二つの姿をしたもう一人の少女が現れる。
そして今、三つの世界が繋がった。
第449話 急げ急げと急かされるままに→←第447話 一方その頃その1その2
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白野 - 最初から一気に読んでしまうくらいとても面白かったです！続きを楽しみにお待ちしています！ (2021年11月3日 22時) (
レス) id: 9415252d02 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - まめさん» コメントありがとうございます！ 1から10まで一気に！？ ありがとうございます、そしてお疲れ様です！ しかも読みやすいと言って頂けるとか重ね重ねありがとうございます！！ まだ28巻中の半分を超えたぐらいなので、これからもお付き合い頂けると幸いです！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - あゆさん» 長らく音沙汰なしでごめんなさい！ 色々あって時間を取れずにいましたが、完結させると豪語した以上は少しずつでもお話を書き続けていきますので！ 筆が遅い分内容も丁寧に……なるかは分かりませんが、よろしければこれからもお付き合いください！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - はじめから一気に読みました！！とても面白くてすいすい読めました！更新頑張ってください(* ´ ▽ ` *) (2020年5月12日 17時) (レス) id: dd4ecb1951 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 復帰(？)、おめでとうございます！ (2020年5月9日 18時) (レス) id: 3afd599366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝石 コハク | 作成日時：2019年4月15日 22時
