第438話 久しぶりの初めまして ページ14
寝ても醒めても、とはまさにこのことではないだろうか。
夢と現実の狭間にいるという状態ですら、うわ言で『守る、必ず』なんて口にしてしまう彼。
「寝てる時ぐらいそんなこと考えなくていいのにね……」
グラスを持っていない方の手で彼の手を握る。
すると、僅かな力でその手が握り返され、軽くだが思わず目を見張ってしまった。
「お前らも寝ろ」
「黒鋼は？」
「まだある」
黒鋼はモコナへ酒瓶を振って見せ、中身が残っていることを示す。
この酒豪めと心の中で諦めのため息をついたAは悪くないはずだ。
ちなみに自分も五杯めだが一杯の量は黒鋼の半分以下。
だが、いつもと変わらぬ態度の彼と違ってそろそろ頭がぼーっとしてきた。
理性のタガというのか、何かそういうものが緩んでいるような感覚だ。
桜都国での酔っ払い劇場を自分がやってしまうわけにはいかないので、ここら辺でやめておくのが得策だろう。
「このまま寝ていい？」
「好きにしろ」
「じゃあそうする」
お言葉に甘えてソファの背もたれに深くもたれかかった時、黒鋼が何か言ったような気がした。
髪がどうとか聞こえたのだけど、眠りの精に魅入られたぼんやりした思考ではうまく聞き取れない。
尋ね返したら「何でもねえ」と話を切られてしまった。
まあ本人が言うのなら本当に何でもないのだろう。
「今度こそ、おやすみ」
モコナとAが眠った後。
一人になった黒鋼は側で眠る仲間を見、残りの二人がいるサクラの部屋を見、最後に繋がれているAと『小狼』の手を見やった。
そうして、独りごちる。
「……どいつもこいつも」
Aが小さく身じろぎをし、ソファにもたれかかった姿勢からむくりと上体を起こした。
「寝たんじゃねえのか」
そう口を開きかけた黒鋼だが、彼女から感じる違和感に気付いた。
気配が違うのだ。
対象は同じ人間なのに気配のみが異なる、という事実で思い出すのは東京での小狼。
黒鋼が警戒の眼差しを向ける中、彼女はこちらを見て微笑んだ。
「初めまして。貴方が黒鋼さん、ね？ 思ったよりおっきいじゃない」
呼び名が違う。
それに今「初めまして」と言った。
やはり目の前にいるのはいつものAではない。
まさか本当に小狼のようにーー
「誤解される前に言っておくけれど、あたしは別に敵じゃないわ。そうね、一言でいうなら“取り戻した記憶から
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白野 - 最初から一気に読んでしまうくらいとても面白かったです！続きを楽しみにお待ちしています！ (2021年11月3日 22時) (
レス) id: 9415252d02 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - まめさん» コメントありがとうございます！ 1から10まで一気に！？ ありがとうございます、そしてお疲れ様です！ しかも読みやすいと言って頂けるとか重ね重ねありがとうございます！！ まだ28巻中の半分を超えたぐらいなので、これからもお付き合い頂けると幸いです！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - あゆさん» 長らく音沙汰なしでごめんなさい！ 色々あって時間を取れずにいましたが、完結させると豪語した以上は少しずつでもお話を書き続けていきますので！ 筆が遅い分内容も丁寧に……なるかは分かりませんが、よろしければこれからもお付き合いください！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - はじめから一気に読みました！！とても面白くてすいすい読めました！更新頑張ってください(* ´ ▽ ` *) (2020年5月12日 17時) (レス) id: dd4ecb1951 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 復帰(？)、おめでとうございます！ (2020年5月9日 18時) (レス) id: 3afd599366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝石 コハク | 作成日時：2019年4月15日 22時
