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どちゃっ、と鳥肌が立つような奇妙な音が響く。落とされた頭は原型を留めておらず、見るに無惨な姿にさせられていた。
「あれだけ豪語してたくせに呆気ないな。片手で十分。」
彼女は薄い笑みを浮かべながら、血の着いた右手を閉じたり、開いたりとしてみせた。彼女の片手で十分、という言葉は消して比喩では無い。今実際に、彼らの目の前で行われたことだった。菅田は冷や汗を流し、ラルゥは閉じていた目を静かに開いた。
「強くなったのね。」
「どの目線で言ってるんだよ。」
彼女の足元の影が蠢き、そこから薙刀を引っ張り出す。「さぁ、次はお前たちだ」彼女は薙刀の刃を向けながらそう言った。そんな時、タイミング悪くスマホが鳴り響く。
「あ、ちょっとタイム。」
先程までの空気はどこへやら、緊張感の無い声色に拍子抜けてしまう。彼女はそんな彼らを他所に、電話に出る。自由でマイペース。誰に似たのかなんて想像が着くだろう。
「はい?」
『お前いつまで待たせんだ!!!時雨さん困らせんじゃねぇよ!!!』
スマホの奥から聞こえてくる眞門の声に思わず耳を話す。その奥で「別に困っちゃねぇけど」という声が聞こえた。今日は眞門と合同だった、とそこで初めて思い出した。
「ごめぇ〜ん。後で唐揚げ棒奢っちゃるから。」
『今回だけだからな。』
「ちょろ」という笑い声がまたスマホの奥から聞こえてくる。電話を切ったAは薙刀を影に戻した。そして、その場から消えた。瞬きの間に消えた彼女をさがして、ラルゥと菅田は辺りを見渡した。そして、背後から響く足音に振り向く。
「今日は終い。こう見えて忙しいんだ。私の貴重な時間をくれてやったんだから、感謝しろよ。」
自分たちと反対の方向に歩いていく彼女に菅田が静止の声をかけようとしたのを、ラルゥが止めた。
「やめなさい。無謀に飛びかかって生け捕りにできる相手じゃないわ。ましてや、倒せる相手でもない。」
「賢い選択だよ、"ラルゥ"。」
懐かしげに呼ばれた名前に、ラルゥは目を丸くしたかと思うと笑みを浮かべた。懐かしい思い出が、ラルゥの頭を駆け巡る。
「……どんなに強くなっても、変わらないわね。あなたの優しいところは。あなたならこの一瞬で私たちを殺せたはずなのに。」
「任務前にこれ以上余計な体力使いたくないからね。」
彼女は振り返りにやりと笑ってみせると、何度こそ彼らの前から消えた。
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夜 - とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。更新頑張ってください! (5月23日 15時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - あれ??五条先生オチ??ってなってます笑笑これからどんな風に夏油さんオチになるのか楽しみです!! (2022年1月21日 15時) (レス) @page28 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
五条彩香(プロフ) - 更新お願いします。・゚・(ノД`)・゚・。。・゚・(ノД`)・゚・。。・゚・(ノД`)・゚・。 (2021年5月11日 1時) (レス) id: 387b7f4b11 (このIDを非表示/違反報告)
Suzu(プロフ) - 匿名さん» そういう言い方はやめたほうが…… (2021年4月30日 17時) (レス) id: 11ffe6e997 (このIDを非表示/違反報告)
五条彩香(プロフ) - wkwk(((o(*゚▽゚*)o)))wkwk (2021年4月29日 16時) (レス) id: 387b7f4b11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年4月17日 0時