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部屋一体が騒がしくなる。温厚そうでありながらも、凛としたその姿に誰しもが見蕩れていただろうに、それが突然豹変したのだ。
「……なんやって?」
直哉の額に青筋が浮かぶ。勢いのままに立ち上がり、彼女の肩を掴んで無理やり振り向かせた。然し、直哉の身体が後ろへと吹っ飛んだ。右の頬が赤く腫れ、何が何だか分かっていない様子だった。その場にいた人間の目は、全てAの方へと向けられている。Aは直哉の頬を殴った右手を軽く振ったあと、直哉へと目を向ける。
その目には何も宿さぬ、ただの無だ。その目はどこかで見た事のある目だ。さっき、いや、それよりももっと昔に見た目だ。
甚爾だ。子供の頃、初めて見た彼の目にそっくりだった。直哉はそれ以上口を開くことさえできず、ぼーっと彼女を見ているばかりだ。しかし彼女はそんなもの気にも止めず、直毘人に向き合った。
「私が禪院家の当主になる。」
「……正気か?」
「私の体は私の物だ。お前らみたいな汚い野郎のために有るんじゃない。子供を産むだけの製造機になんてなってたまるか。」
Aの鋭い目が直毘人を睨みつける。「ぶ、無礼な…!!」「女の分際で……!」禪院家の人間たちがそう声を荒らげた。
「その女如きに勝てる男がこの中に一人でも居るの?」
野次を飛ばしていた禪院家の人間が一斉に口を噤んだ。彼女は今、この禪院家の中で誰よりも強い術式を持っていることは間違いない。
「私は禪院の名を捨てる。」
懐から短剣を取り出すと、高い位置で纏められていた髪を掴んで毛束を切り落とした。ハラハラと落ちる髪を見て、誰しもが目を見開く。彼女は直毘人の前に座り、髪留めに纏められ残った毛束を目の前に置いた。
「そして私はまたここに戻ってくる。禪院家当主として。」
Aと直毘人の視線が重なった。直毘人はふるふると身体をふるわせ、そして声を荒らげて笑った。
「ブッハッハッ!!気の強い女子、実に結構だ!!良かろう、お前を禪院次期当主候補として迎え入れる!!」
「なっ……!」
直哉の顔色が変わる。彼女は強い。才能を持ち合わせた天才だった。禪院家から産まれた最強。禪院家の当主候補として名を挙げるに足る実力だろう。
しかし、直哉はそれに納得が出来ないらしい。
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夜 - とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。更新頑張ってください! (5月23日 15時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - あれ??五条先生オチ??ってなってます笑笑これからどんな風に夏油さんオチになるのか楽しみです!! (2022年1月21日 15時) (レス) @page28 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
五条彩香(プロフ) - 更新お願いします。・゚・(ノД`)・゚・。。・゚・(ノД`)・゚・。。・゚・(ノД`)・゚・。 (2021年5月11日 1時) (レス) id: 387b7f4b11 (このIDを非表示/違反報告)
Suzu(プロフ) - 匿名さん» そういう言い方はやめたほうが…… (2021年4月30日 17時) (レス) id: 11ffe6e997 (このIDを非表示/違反報告)
五条彩香(プロフ) - wkwk(((o(*゚▽゚*)o)))wkwk (2021年4月29日 16時) (レス) id: 387b7f4b11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年4月17日 0時