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任務を終えて、手土産に彼女の好きそうなケーキを買って寮へと向かう。普通なら止められるべき行為なわけだが、ここはイカれた術師しかいないので止めるものはいない。伏黒自身少しの罪悪感があるものの、彼女と会えていないのもまた事実。
小さく深呼吸をして彼女の部屋をノックすると、少しの間があったあと扉が開いた。
「いらっしゃい恵くん!」
「……あぁ。」
「どーぞ!」
そう言う彼女の部屋に入り靴を脱ぐ。一瞬ドキッとした。短パンにVネックのタンクトップ、その上には薄手のパーカーを羽織っているだけ。いつもそんな格好なのか?と思ったが、記憶を遡ればそんな気がしないでもない。
危機感のなさがここでも現れているのかと思うと心配でならない。
「これ、帰りに買ってきた。お前が好きそうなケーキ。」
「え、まじ?ありがとう〜!映画見ながら食べよ!」
「あぁ。……で、どんな映画借りてきたんだ?」
「なんかね〜アクションらしいんだけど、それの4借りてきた。」
「1と2と3どうした。」
「なかったの〜」
「じゃあ別の借りろよ……」
「どーしても見たくて。」
コーヒーとカフェオレの入ったカップを持った彼女は、にひひっといたずらっ子のような笑みを浮かべた。まぁ別に彼女がいいなら伏黒自身なんでもいいのだが。
「恵くんどっち食べるー?」
「Aが好きな方食べろ。」
「んー……じゃあ半分にしよ!」
そう来ると思った、と口角を上げながら彼女の入れたコーヒーを啜る。ケーキを持って座布団代わりのクッションの上に座ると、少し大きめのビデオプレイヤーにDVDを入れた。
「次は映画館に見に行こうよ。今度これの5が公開されるらしいから。」
「その前に1と2と3見てからな。」
ケーキを食べながらそんな話をする。ケーキを食べ終えてしばらくぼーっとその映画を見ていると、彼女の方からぎゅっと腕にしがみついてきた。ビクッと身体が跳ねる。
ちらっと彼女の方を見ると一瞬目が合ったが直ぐにそらされた。部屋に入った時からどこかよそよそしい感じがしていたが、何かあるのだろうか。そんな事を考えながら、また画面へと視線を戻した。しかし、さっきのようにぼーっと見ている訳にもいかなくて、腕に当てられた柔らかなそれが気になって仕方ない。耐えろ、耐えろ、そう自分に言い聞かせ小さく深呼吸をした。
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emma(プロフ) - 初めまして!この作品が大好きです!結婚で騒ぐけどバージンロードきめきめで歩いちゃう悟パパも、なんなら妊娠で絶望するけど孫にデレデレになっちゃう悟じいじも見たいです!!笑 (2021年7月10日 23時) (レス) id: 4643ab1372 (このIDを非表示/違反報告)
朱夏(プロフ) - 初めまして!初めてコンメントさせていただきます!この作品ほんとに大好きで、特に伏黒くんとくっつくところはもう死ぬくらい好きでしょうがないんですよね!だから結婚後まで書いて欲しいです!いくら長くても付き合います!主様が良ければ書いて欲しいです! (2021年7月10日 22時) (レス) id: c2a1b68a40 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 結婚まで続けて欲しいです! (2021年7月10日 22時) (レス) id: 947326f28f (このIDを非表示/違反報告)
かれ(プロフ) - 初めまして,いつも楽しく拝見させていただいています。個人的にはこのまま伏黒との結婚まで続いてほしいなぁという思いです。作者さんの作品は誰も死んだらしないので悲しむこともなく安心して読めます。これからも無理のない程度に投稿してもらえたら嬉しいです。 (2021年7月10日 22時) (レス) id: 0a939cc9b5 (このIDを非表示/違反報告)
らっかせい - 続いて欲しいですわー!!いつも観てますーー!!お久しぶりですーー!!(語順逆で.すいません) (2021年7月10日 21時) (レス) id: ac50ef14ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年6月12日 2時