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埼玉県の住宅街。ボロボロのアパートの扉を叩くと、黒髪の男の子が出てくる。
「や、久しぶりだね恵。」
「……!Aさん!!」
伏黒恵。伏黒甚爾の息子である。彼は彼女を見るやいなや抱きついた。
「ごめんね、しばらく会いに来れなくて。」
「……死んじゃったかと思った。」
「死なないよさすがに。僕が強いの知ってるでしょ?……最近甚爾さん帰ってきた?」
「……来た。今出かけてる。」
「そう。津美紀は?」
「中にいる。」
「お邪魔してもいい?」
彼女を否定するわけがなくて、首を縦に振りとたとたと中に入っていった。
「Aさん!!」
「久しぶり、津美紀。」
「会いたかった……!もう来てくれないかと思って……!」
「ごめんね。来れなくて。」
ぽんぽんと優しく頭を撫でると、津美紀は嬉しそうにニコッと笑った。
「今日もこの後仕事だからすぐ帰るんだけど、少し話がしたくて。」
こっちにおいで、と手招きをすると、2人は彼女の前にちょこんと座った。
「お父さんに聞いたかな、高専で働くってこと。」
「なんか言ってた。東京に引っ越すかもしれないってことも。」
「そこまで聞いてるなら大丈夫そうだね。……なら今頃甚爾さんはお宿探しに必死な頃かな?」
賭け事に行っている線もあると考えたが、彼が高専で働くのはもはや決定事項でもある。この話を蹴るのはAを裏切ること、つまり誠一郎を裏切ることになる。彼は甚爾が最初に心を開き信頼し、尊敬する人物だ。そしてAは可愛がった妹のような存在でもある。
「家は僕が探しておくから、帰ってきたら伝えておいてくれるかい?」
「うん!」
「ごめんね、僕たちの勝手な都合で引っ越すことになってしまって。」
「別に、俺は困らない。Aさんにも会えるんだろ?」
「まぁ、ここに居た頃よりかは頻繁に会えるだろうね。」
「なら引っ越す。」
「私も、お友達に会えないのは寂しいけど、Aさんと会えるなら気にしない!」
二人は真っ直ぐな目で彼女を見て必死に首を縦に振った。あぁ、可愛いな……思わず頬が緩む。
「ふふっ、ありがとう二人とも。……それでね、ここからが真面目な話なんだけど……ちゃんと聞くんだよ?」
Aがそう言うと、二人は先程とは売って代わり真剣な表情で彼女を見た。
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moo(プロフ) - 面白かったです! (8月9日 2時) (レス) @page47 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
雪マカロン - これからも、更新頑張ってください! (2021年2月16日 8時) (レス) id: c9091179e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年2月15日 22時