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「……誠一郎さんには恩もあるからなぁ……1000万だ。」

「貰うには貰うんだ。甚爾さんらしいよ!」

「……ったく……お前には負けるよ……俺がお前に負けるのをわかってて言ってやがる。」

「甚爾さんは、僕に甘かったからね。」






負ける、というのは物理的な話じゃない。術式を使えば負けるだろうが、素手でやりあって彼に敵うはずもない。負けるというのは、言ってしまえば親戚のおじさんが姪っ子に甘々デレデレということだ。





「……理子ちゃん、君はみんなと天元様の元に。僕は甚爾さんとお話があるからね。」

「えっと……誰じゃ?」

「……凍氷A。僕が凍氷Aだよ。電話しただろう?」

「……女じゃなかったのか!?!?」

「女だよ。胸見る?胸。」

「見せてくれんのか?」

「もう一度殴る?」





遠くの方で寝そべり、シシシッと笑う甚爾。ほかの彼らは、その2人の関係がまるっきり分からずじまいだ。





「おい、俺の気が変わる前に連れていけ。」

「ほら、何ぼさっとしてるんだい。連れておいきよ。」

「あ、あぁ……理子ちゃん、行こう。」




Aはヒラヒラと手を振り、中に入っていく彼らを見送った。





「……さて………最近家に帰った?」

「……あぁ、……もう何年も帰ってねぇよ。」

「知ってる。恵に聞いたからね。凍らすよ?」

「おーっ、怖っ!」

「……まさか売ったなんて事ないだろうね。」

「まだ売ってねぇよ。」

「……近々売られると……全く呆れた人だよ。突然僕らの前から姿をくらませたかと思えば、子供連れてきて婿に入った……とか。」





甚爾は怪我をして瀕死の所を誠一郎に助けられ、それから数年間凍氷家で暮らしていた。Aは彼にそれなりに可愛がってもらっていた思い出がある。子供らしいのに、どこか子供らしくない。甚爾はそんな彼女が可愛くて仕方なかったのだ。

そんな甚爾の息子の様子をAは時々見に行っていたが、ここ2年は会いに行けていない。忙しいこと極まれりだ。





「術師殺し……だったかな。足を洗う気は無いかい?」

「今更か?」

「今更、だよ。父さんたちも、甚爾さんの帰りを待ってる。そして、今まで殺した術師の分まで恵と津美紀を幸せにし、幸せになる義務がある。そのための手助けならしてあげないこともない。」

「………お人好し。」

「褒め言葉。」





Aがにししっと笑うと、甚爾はふっと口角を上げて懐かしむように笑った。

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moo(プロフ) - 面白かったです! (8月9日 2時) (レス) @page47 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
雪マカロン - これからも、更新頑張ってください! (2021年2月16日 8時) (レス) id: c9091179e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年2月15日 22時

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