・40 ページ40
｢そのすぐあとかな、領域展開を使えるようになった僕が特級になったのは。｣
｢……すまない。興味本位でこんなことを……｣
｢ははっ、いいんだよ。気にする事じゃない。気になるのは当たり前だしね！｣
あははっ！と彼女は笑った。冷えたコーンスープの入ったカップを持ち、彼女はスプーンを使うことなく一気に飲み干した。
｢スプーン要らなかったね〜！ごめんね、傑。わざわざ変えてもらったのに！｣
｢………そんな、無理に笑わなくてもいいんだよ。｣
｢ははっ、そんなものしてないよ。だって、もう何年も前の話だよ？いつまでもめそめそしてられないよ！さて、タバコでも吸ってくるかな。サンドイッチは任務の移動中に食べる事にするよ！｣
まだ心配そうに彼女を見詰める3人を置いて、Aは食堂を出ると足早に外に出た。火をつけたタバコはいつものタバコとは違うパッケージ。それは慶彦が吸っていたものと同じ銘柄のパッケージだった。
呪詛師が落としたなんて嘘もいいところ。崩れ落ちて粉々になったソレから分かるものなんてなかったし、なにか落としたものといえば呪具の鎌くらいだ。
｢……兄さんのタバコは相変わらず不味いねぇ。｣
呟いたその言葉は風に流れて消えていく。あの時、逃げていなければ、と何度も後悔したし、沢山涙を流した。でも、悔やんでも仕方がなかった。
口調は言われた通り物腰柔らかく紳士的に。振る舞い優しく穏やかに。中学2年生になる頃にはまるで別人だった。今ではこれが定着しているが、最初の頃といえば男のように振る舞うことだけを考えていた。しかし実際はこっちの方がウケが良く、情報収集にも大いに役立った。何より自分の性格にも見た目にもあっている気がした。
ただ、それと同時に感情に蓋をしてしまっただけで。
｢死ぬ前にいいことを学んでしまったよ。ありがとね、慶彦兄さん。｣
もくもくと上がる煙にそう言って微笑む。
あー、不味い不味い。なんて文句を垂れながらタバコを灰皿に押し潰し、任務へと向かう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1407人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チビじゃねぇし、お前らが高すぎんだよ。♂ - ガチめに笑い方が宿儺になったのだが (2021年2月14日 4時) (
レス) id: 175edfd33c (このIDを非表示/違反報告)
ta0628tm0105(プロフ) - 次男…………なんかあった説…………最っ高、であります！！！良い良い！！俺はいま機嫌がいい！！！！ケヒッもう、最っ高…………続き待ってます！ (2021年2月14日 3時) (レス) id: 0ed1a1911f (このIDを非表示/違反報告)
rindou0505(プロフ) - とっても凄く好きな内容でした。本当に素敵な作品です。なんでお気に入りの登録者がこんなにも少ないのかが全く理解出来ません。が、応援しています。お身体に気を付けて作品の更新をして下さい。 (2021年2月10日 0時) (レス) id: abbbc2a66d (このIDを非表示/違反報告)
しぃぷ(プロフ) - え、めっちゃ好き……最高か？秒でお気に入り登録しました。素敵な作品有難う御座います！！更新頑張って下さい！！！ (2021年2月9日 23時) (レス) id: c3f6824249 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 最高ですめちゃくちゃ面白い…好き… (2021年2月9日 22時) (レス) id: 470bfeaa7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花蛸花
| 作成日時：2021年2月9日 17時
