・35 ページ35
深夜。ポートマフィア拠点
「首領。例の女に関する資料が届きました。」
「ご苦労だったね、中也くん。」
森の座る執務机の上に、一つの資料が置かれた。その資料をちらりと見たあと、机の引き出しから一冊の資料を取りだした。それはかなり分厚い。
"物理暴走事件詳細報告書"
その見出しの資料を手に取り、ぱらぱらと捲った。
「三年前、横浜で起こった物理暴走事件。ポートマフィアの領土も巻き込まれた、あの事件だ。辺り一面、重力によってへこみ、斥力によって弾かれ、引力によって引き寄せられていた。目撃した構成員によれば、振り子の原理や速度までも操る異能力者の力が暴走したとか言っていたが、皆記憶が曖昧だった。」
森が当時のことを話す傍らで、エリスが絵を描いている。中原は何も言わない。
「特務課が関わっているのか、私たちポートマフィアはなんの情報を掴めなかった。然し、そんな異能力者がいるとなれば、是非とも欲しい。男か女かも分からない、この地球の力を操る異能力者が。そして……今日の夕刻頃、その異能力者に該当する少女が遂に見つかった。」
森はそこで、やっとこさ中原の持ってきた資料へと手を伸ばす。最初の表紙はただ"極秘"とだけ判子が押されていた。その表紙を捲った先には、一人の少女の写真と、経歴がずらりと並んだ資料があった。
「坂口A………誰かに似ていると思ったら、懐かしい名前じゃないか。」
"父、母の行方は共に不明。現在は義兄と生活を共に送っている。義兄は内務省異能特務課坂口安吾参事官補佐である。"
一番最後の文に、森は口角を上げた。
「女は探偵社の人間のようです。」
「それはそれは……また厄介な事になったねぇ。」
森はわざとらしく眉を下げて言って見せた。この後どうするのか、そんなものはもう森の中では決まっているだろうに。
「仕方ないねぇ……お嬢さん相手にこんな事をするのは心が痛むが、致し方ない。中也くん。」
「はい。」
「芥川くんと共に彼女を攫って来なさい。決して、殺してはいけないよ。」
「はっ」
中原は踵を返し、執務室を後にした。ポートマフィアに目をつけられた、哀れな少女。
「悪く思うなよ。」
中原は帽子を抑えながら、緩く口角を上げた。
187人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
琉亜 - うち的にはもうちょい安吾との絡み見せて頂きたい (2023年2月23日 23時) (レス) @page7 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月29日 1時