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森のいる首領執務室に入ると、丁度電話を切ったところだった。





「森さん?」

「あぁ、Aちゃん!どうしたんだい?羊の少年は?」

「紅茶を飲んでシャワーを浴びさせたら、ソファで寝ちゃった。きっと疲れてたのね。」

「Aちゃんは優しいねぇ。」





おいでおいで、と手招きをされて、彼女は小さな足でちょこちょこと走っていく。そばに駆け寄ってきたAを抱えると、膝の上に座らせる。





「ねぇ、さっきのお電話は誰からだったの?」

「あぁ、太宰くんだよ。」





森が窓の外を指す。部屋はくらいため、窓からは横浜の夜景が見渡せる。その視線のはるか先、市街地を超えた先の空が茜色に薄く明滅している。遠くで行われている戦闘と林地の火災に、雲が照らし出されているのだ。





「まぁ!綺麗!」

「今、あちらは大変なことになっているらしいよ。」

「大丈夫よ!兄様と中也が何とかするわ!」

「君もそう思うかい?」

「勿論!二人とも喧嘩ばかりしているけど、相性はとってもいいと思うわ!」

「君は賢いね。その通り、あの二人はきっと面白いものを見せてくれるさ。」





そう言って、森は彼女の柔らかな髪を撫でた。





「処で、私になにか用事があったのではないかい?」

「あ、そう!思い出したわ!今度、ポートマフィアが管理する旅客船が倫敦に出航するじゃない?」

「あぁ、そうだね。」

「その船に、羊の彼を御招待してあげて欲しいの!」

「おや、それは何故?」

「彼、王様になりたいんですって。私も期待してるわけじゃないのよ?だって全く王様の風格じゃないんだもの!」

「Aちゃんってたまに辛辣なこと言うよね……それで?」

「期待はしていないけど、絶対になれないという訳じゃ無さそうなの。今回の件で色々と思い知ったでしょうから。それでもし王様になれたら、私は恩を売った事になるでしょう?」





彼女はあどけない幼い少女の笑みを浮かべてそう言った。森はきょとんと目を見開いたかと思うと、けらけらと笑った。





「Aちゃん、君は案外策士な子のようだ。一体誰に似たのかな?」

「ん〜……兄様と森さん!お二人もよく似てるもの!」

「ふふ、そうかもしれないね。良いよ。可愛いAちゃんからの頼みだ。手配しておくよ。」

「ありがとう、森さん!」





Aはすりすりと頬を寄せれば、森はだらしのないほどにでれでれと頬を緩ませた。

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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月10日 12時

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