前髪と息子-4【呪術廻戦】

・41 ページ41

・





-記録-





-2022年 11月-


-東京都◾◾村-





-任務報告-





-村内での怪死、行方不明者多数。その原因と思われる呪霊の祓除。-






-高専生徒5名が派遣され、内一名死亡。-






[概要]





-非術師五名を保護し、内一名が襲われ負傷。-





高専2年[葦原実幸]の反転術式でも間に合わず死亡を確認。-





-その後、一級相当の呪霊三体、二級呪霊六体を祓除。-





-高専2年[葦原実幸]を保護した非術師の女性からかばい高専2年[葦原幸穂]が負傷。-





-斧で首元を切られ出血多量。-





-その場での処置は不可能とされ、高専に搬送するも、その道中で死亡を確認。-






-犯人の非術師女性[24]を高専で保護した後、逮捕。-




____________





ギリッとペンを強く握り締める。その時、Aは伊地知と報告書の相談をしていてすぐ側には居なかった。悲鳴が聞こえて、その時初めて気がついた。

誰も警戒していなかった。その理由は何故か。まさか助けた人間に突然襲われるなんて誰も思っていないからだ。その女性は死んだ非術師の妻だった。なぜ助けきれなかったのか、と喚き散らすその女に殺意が湧いた。

その命は誰が助けてやったのか、と。彼女達の怪我を治したのも実幸だった。その中でただ一人助けられなかったのがその男性だった。でも、元々手遅れだったのだ。そもそも危ないとわかっていて足を踏み入れた自分たちが悪いんだろう。今すぐ、殺してやりたい。






｢A……｣

｢……実幸は？｣

｢……家入さんがついてるよ。今は精神的にも良くないみたい。幸慶も、今は誰にも会いたくないって……｣

｢………あとで、実幸の所に顔を出したあと幸慶にも声をかけてみるよ。｣





彼も辛いはずだろう。今にも泣きそうな顔をしている。そんな彼の頭を撫でて席を立つと、グッと腕を引かれる。





｢どこ行くの？｣

｢報告書、硝子ちゃんのところに持っていくだけだよ。…なんで？｣

雅…………ううん、ごめん。｣






雅火の言葉を聞いてすぐ、彼は教室を出た。今にもどこかへ消えてしまいそうで、ここで止めないと、後悔するんじゃないかと思った。その言葉は、声に発することなく飲み込まれた。

報告書を提出するだけで本当に良かったなんて思うのは、今後もこの日だけだろう。

・42→←・40

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す