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「却説……あんたの怪我を全部異能で治さなかったわけだけどね。妾からのちょっとしたお仕置きさ。」
彼女は笑った。傍にある椅子に腰かけて、ゆったりと脚を組む。
「あんたは、研究の凡てを消すために死ぬと言った。でもそれは間違ってるんだよ。あんたが死んだところでその実験が行われていた事実は変わらないんだからね。」
「……正直、いつでも良かったんです。あの組織を壊滅させた後ならいつでも。いちばん最短で、合理的だったのがあの時だっただけ。少しは痛み苦しみながら死ねるかと思ったのに………」
「もしかしてあんた自 殺嗜癖かい?そんな所まであの太宰に似なくていいんだよ。」
「嗜癖という程でも……でも、そうですね……私はどちらかと言うと、未遂がしたいんですよ。痛みと苦しみを味わいながら死ぬって、一体なんだろうと………それを知れたら、少しは人間らしくなれると思ったんです………せめて、死ぬ間際だけでも、人間らしさを味わいたくて、態々爆発させたのに………」
彼女はあの研究所を爆発させる必要はなかったのだ。爆破させずとも壊滅させる方法は死ぬ程ある。その死ぬ程ある方法のどれを使っても、痛み、苦しみを、死にたくなるほど感じながら死ぬ事が出来ないと思った。だから爆破させたのだ。
「命は粗末にするもんじゃないよ。愛するもんが哀しむからね。」
「………さぁ、どうでしょう。居ますか、そんな人。」
「沢山いるさ。例えば、あんたの兄貴とか。幼女趣味の父親も、帽子をかぶった彼だってそうさ。あんたの部下だって、きっと嘆き悲しむ。それが自分達を庇っての死だと分かれば尚更ね。
乱歩さんが言ってたよ。あんたは、あんたのその身体の仕組みを政府に知られることを恐れてるってね。その身体の構造を知られ、一番手の出しやすい部下を狙われることを何よりも恐れてる。違うかい。」
与謝野の言葉に、彼女は何も言い返さなかった。無言は肯定の表れだ。与謝野は口角を上げた。
「あんたは、あんたが思う程残忍じゃない。部下を思うだけの気持ちがある。それが人間らしさだよ。」
与謝野は優しい手つきで彼女の頭を撫でた。その手は暖かく、とても優しかった。
「あんたと話したがってる奴らは沢山いる。だから妾は失礼するよ。これだけ話せるなら、体調に問題もないだろうからね。」
そう言って、与謝野は医務室から出ていった。それと入れ代わりに、ナオミが医務室へと飛び込んでくる。
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かが(プロフ) - とっっっても感動しました!今まで見てきた小説の中で1番好きです!父親を倒した辺りからあまりの感動に涙がでました😭それぐらい素晴らしい文才をもっているなんて羨ましいです!これからも投稿頑張ってください!応援してます!☺️ (2023年2月4日 20時) (レス) @page32 id: 04a276ffbb (このIDを非表示/違反報告)
なぴあ - 太宰さんと夢主の掛け合いが大好きです!!!何故太宰さんと同じ事をする夢主ちゃん? 過去編も読ませていただいてます!! 投稿頑張って下さい!! (2022年3月29日 17時) (レス) @page36 id: bc58708f8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年3月21日 11時