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「ただいま〜」
「おかえりなさいあなた!」
「おかえりおじいちゃん。」
「おぉ!A!」
よく来たな〜!とAの頭をわしゃわしゃと撫でると、ぎゅっと力強く抱きしめた。
「ふふ、久しぶりだね。」
「あぁ、見ない間に随分背が伸びたな。これは私も直ぐに追い越されてしまうよ。」
「あなた、先に手洗って着替えてきて。今日はコロッケよ!Aも手伝ってくれて助かっちゃったわ。」
「それは楽しみだな。すぐ着替えてくるよ。」
聡は軽い足取りで洗面台の方に向かい、手を洗う。その間にAは美代子の手伝いをする。テーブルを拭き、食器を並べる。
「おじいちゃん、ビール飲む?」
「あぁ、いただくよ。」
「A、おじいちゃんももう若くないんだから飲ませすぎないでね?」
「おいおい、それは酷いだろ。」
聡がどこか悔しそうにそう言うと、美代子はくすくすと笑った。いつまで経っても仲のいい、近所でも有名なおしどり夫婦。そんなふたりを見ているのは結構楽しい。
「はい、お疲れ様。」
「ありがとう。お酌が上手だな。」
「よいしょしてもビールはこの瓶ビール一本しか飲ませないよ。」
「……お前、母さんに似てきたな。」
ふふん、とAが笑うと、聡は苦笑いをしながらビールを飲む。
「お酒もいいけど、ご飯食べましょうね。」
「そうだな、そうしよう。」
「「「いただきます。」」」
手を合わせて、箸を手に取る。美代子が取り分けてくれたコロッケの乗ったお皿を受け取り、それを箸でつかみそのままかぶりつく。
サクッと衣の音がする。いつもの味、何度も食べてきた味のはずなのになんだか少し懐かしいような気がしてしまう。
「…………美味しい?」
「……………うん。」
本当に自然と、なんの前触れもなく流れてきた涙をゴシゴシと拭う。なんで泣いているのかなんて分からないけれど、ポロポロと次々に流れてくる涙に困惑する。
「………おばあちゃんのコロッケは美味しいからな。ゆっくり食べるといいよ。」
「………う"ん、」
2人はどうしたのかと無理に聞こうとはしなかった。ただ、優しく頭を撫でられるその手が、どうしようもなく嬉しかった。
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零落(プロフ) - 久々に占ツクに戻ってきたら超良作に出会って、一気に最新話まで読んでしまいました。話の途中で何度も笑ってしまったり、感動したり…もう最高です!素敵な作品をありがとうございます。これからも更新楽しみにしております。 (2021年6月4日 6時) (レス) id: 35493f6139 (このIDを非表示/違反報告)
方言男子 - やべ、性癖に刺さった (2021年5月26日 18時) (レス) id: b75236f17d (このIDを非表示/違反報告)
海洋生物(プロフ) - 続編おめでとうございます!成長した夢主くんかっけぇ!あと面白い!これからも頑張ってください! (2021年5月25日 7時) (レス) id: c21e60aa61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年5月25日 5時