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小学六年生、小学校の最高学年だ。もうあとほんの少しで卒業で、卒業式に向けての準備が少しづつ行われていた。そんなある日の事だった。
実幸は可愛い。幸穂が綺麗系なら実幸は可愛い系統の顔で、それでいて大人しい。周りにいつも合わせているタイプで、だからこそ意見を言い合えるA達のそばはとても居心地が良かった。しかし、そんな彼女をよく思わないクラスメイトはいるもので、陰湿な嫌がらせを受けることも少なくはなかった。
気が弱いが故に受けてしまう。そして極めつけは、彼女の術式だった。ある日、クラスメイトと揉めた際に出来てしまった腕の傷に思わず術式を使ってしまったのだ。
「うわ、治った…!」
「バケモンだ!」
「きもちわるぅー!」
先生にもいいに行こう。誰かがそう言って、彼女の手を無理やり引いて教室を出ていった。嫌がる彼女を無理やりだ。
その時、A達はその場にいなくて、騒ぎを聞き付けた時にはもう遅かった。クラスメイトと揉めて足を滑らせた実幸は階段から転げ落ち、踊り場で倒れていた。まだ大きな傷を治せるほどの技術を持っていなかったため、頭部からドクドクと血が流れでていた。
それだけを覚えていた。
気がついたら高専の医務室にいて、家入が彼女の治療をしていた。傷跡は残らないらしく、他は左足の骨折だけで済み腕の傷が治ったのは気の所為だったと言うことで収まった。
そのクラスメイトは引越し、今はどこで何をしているのかは分からない。
「………はぁ………」
時計を見るとまだ朝の4時半で、大きなため息をついたあと舌打ちをする。部屋を出て冷蔵庫から水のペットボトルを取り出す。
ごくごくと音を立ててそれを半分ほどまで飲み干した。九十九とあんな話をしたせいか、嫌な夢を見てしまった。
「…………」
助けられなかった。もう少し早くに来ていれば良かった。あの時掠めた指先の感覚は今でも覚えている。強い衝撃により呼吸が上手く出来ていなかった彼女は浅い呼吸を繰り返し頭からは血が流れ続けた。
自分のせいではない、どうせ治るんだからとその場から逃げ出すクラスメイトを殺してやりたいとさえ思った。その時初めて非術師に殺意が湧いた。自分が恐ろしくなった。誰を殺したいと思ったのか、なぜそんなことを思ったのか。
「……なにしてんだろ。」
頭を抱え込むようにしてその場にしゃがみこみ、ぐしゃりと髪をまぜ大きくため息をついた。
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零落(プロフ) - 久々に占ツクに戻ってきたら超良作に出会って、一気に最新話まで読んでしまいました。話の途中で何度も笑ってしまったり、感動したり…もう最高です!素敵な作品をありがとうございます。これからも更新楽しみにしております。 (2021年6月4日 6時) (レス) id: 35493f6139 (このIDを非表示/違反報告)
方言男子 - やべ、性癖に刺さった (2021年5月26日 18時) (レス) id: b75236f17d (このIDを非表示/違反報告)
海洋生物(プロフ) - 続編おめでとうございます!成長した夢主くんかっけぇ!あと面白い!これからも頑張ってください! (2021年5月25日 7時) (レス) id: c21e60aa61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年5月25日 5時