自称・サラリーマン(反社)とJK【東リべ】

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とはいえ、感動している暇はない。この状況をどうにかしなければならない。さもないと首が飛ぶ。物理的に。多分。





｢Aちゃんに嫌われんのはやだわ。｣

｢まじかよ。｣





薄々勘づいてはいたが、灰谷蘭は桐生Aに相当お熱だ。そうでもなければ、ここまで気にかけることなんてなかっただろう。嫌われたくない。もうそれが答えだ。彼女の話を楽しそうにする姿も、話をしている時の優しげな眼差しも、30年近く連れ添ってきた今までそんな表情見たことがなかった。

一方のAも、少なからず灰谷蘭という男にいい印象を持っているのに違いない。もうめんどくせぇからさっさと付き合えば？というのが本音である。心底面倒臭いから。





｢告れば？｣





兄の機嫌を持ち上げるが先か、面倒くさいが先か。圧倒的に面倒くさいだった。





｢は？｣

｢は？って……は？兄貴あの子のこと好きだろそれ。まさか気づいてねぇの？｣

｢ばか気付いてるわ。だからは？って言ったの。｣

｢だからなんで、は？｣

｢お前まじもんの馬鹿か？大馬鹿か？兄ちゃんはお前をそんな馬鹿に育てた覚えはねぇぞ？誰だ、誰のせいだ？｣

｢少なくとも兄貴に育てられた覚えはねぇし、俺が大馬鹿なんだとするなら今の兄貴はくそ馬鹿だわ。｣





馬鹿もいいとこ、大馬鹿くそ馬鹿。うじうじしてばかりで見ていて正直鬱陶しい。反社である事がバレたところでいくらでも手はある。兄なら軽く監 禁くらいしていそうなものだ。いや、絶対するだろ。





｢閉じ込めとけばいいんだろ。そうすりゃバレたところで逃げらんねぇし。｣

｢Aちゃんはレオと散歩すんのが好きなの。閉じ込めたら可哀想だろうが。｣

｢本当に兄貴？本当に兄ちゃん？え、偽物？それとも熱ある？大丈夫？三途からやべぇ薬とか貰ったりしてねぇ？拾い食いはしちゃダメなんて今どきガキでも犬でも分かんぞ？｣

｢殺してやろうか。｣





思わず己の目と耳を疑った。兄の額に手を当てると｢熱ねぇから｣とその手を跳ね除けられる。兄から｢可哀想｣なんてきっとこの先兄とは無縁であろうと思っていた単語が出てきたのだ。それも、結構ガチめのトーンの可哀想だった。今まで、巫山戯てしか使ったことのなかったその言葉が、今、本気で。そう、本気で兄の口から発せられた。今度こそ感動で涙が出るかと思った。結構本気で。

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