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その日、兄の機嫌はすこぶる悪かった。裏切り者に容赦がないのはいつもの事だが、仕事が荒く、果てには予定にない
いや、機嫌が悪いと言うより心ここに在らずというような感じだろうか。ボーッとしている。
「あ、間違えた。まぁいいか。」
今も全く関係の無い部下を間違えて殺してしまったわけだが、蘭はそんなもの気にする素振りもなくまたボーッとしている。機嫌が悪そうで、そうでないような彼に竜胆も困惑していた。こんなこと初めてだ。少なくとも、彼女との交友が持たれるようになってからはなかった。
これは聞いた方がいい雰囲気だろうか。いや、聞け。聞くんだ灰谷竜胆。これ以上梵天の経済枠九井一の機嫌を損ねるな。恩を売れ。そう自分に言い聞かせて、大きく深呼吸をする。
「兄貴?」
「………」
「おーい……」
「……………」
「…………兄貴!!!」
「うおっ……なんだよ竜胆じゃん。」
なに?と首を傾げていつも通りの笑顔を浮かべているが、え、まじで気づかなかったんですか?というのが本音だ。よくそれで幹部が務まるな。辞めろ幹部死ぬぞ。
「兄貴、なんかあった?今日ずーっとボーッとしてんじゃん。」
「あー、……いや、なんもねー……あー、うん。」
「なんだよ。」
「………この前さぁ、Aちゃんと九井会わせたって言ったじゃん。」
やっぱりAちゃん絡みかよ。何となく予想していたであろう竜胆は「おう」と小さく頷いた。
「そん時さァ、俺思ったんだよね。俺が反社だってあの子が知ったらどーするんだろうって。」
この場合、彼女が殺される殺されないの話ではないのだろう。自分への態度、向けられる目。嫌われてしまうのだろうか、もう二度と会えなくなってしまうのだろうか。そんな不安を抱えたのは産まれて初めてだった。
今まで、女なんて自分の欲を発散するだけのものだった。しつこければ殺してしまえばいい。交友関係なんて築こうとも思わなかったし、気に入ったかと思えば直ぐに飽きて関係を切られるか、やはり殺される。良くも悪くも浅い関係を築いてきた。そんな兄が今真剣に悩んでいる。それだけで感動で涙が出そうだ。出なかったけど。
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かのん - 竜ちゃんの心の声が荒れてて面白過ぎるwww (2022年1月15日 12時) (レス) @page47 id: 23ecb5b22b (このIDを非表示/違反報告)
やまだ(プロフ) - あれれ?竜胆さんしれっと春千夜がヤク中ってバラしちゃったよ?((゜ㅇ゜)??? アレェ?竜胆さん? (2021年10月16日 3時) (レス) @page47 id: 4fca3f24b6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぽぽ(プロフ) - 蘭さん好きぃぃぃぃ!!!!そして竜胆面白すぎるw w w (2021年10月14日 20時) (レス) @page43 id: 908e4168b8 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 竜胆の心の声が面白すぎますwwwwww (2021年10月14日 15時) (レス) @page43 id: 947326f28f (このIDを非表示/違反報告)
絶狼(ゼロ)(プロフ) - 面白いですゲラゲラ笑ってしまいました。最新では思わず竜胆ォォォwwwwwwと変な声が出てしまいましたこれからも頑張ってください応援してます (2021年10月14日 14時) (レス) @page43 id: 1a90028617 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年9月26日 3時