おっかな妹-2【東リべ】

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抗争当日。抗争の場として選ばれた廃車場には、彼女らの抗争を一目見ようとやってきたギャラリーで埋め尽くされていた。その中でも一際目立つ黒ずくめの集団。目部下にパーカーのフードを被り、小柄で遠目からでは男か女かの正確な判別もしずらい人物を中心としている。





｢……なぁ、A。｣

｢あん？｣

｢あの人たち、暇なのか？｣

｢知らねぇ〜妹の晴れ舞台を一目見たくてわざわざ来るって兄貴たちが言い出したら他も着いてきたんだって。｣

｢三途さんはなんでわざわざカメラを？｣

｢ザナちゃんに撮るように言われたんだとさ〜｣





あれでは目立って仕方ない。自分たちが日本最大の犯罪組織の幹部とその首領であることを忘れているのだろうか。泉が｢僕も後でもらお〜｣なんて呑気なことを言っているのを横目に、神宮はため息をつく。それから間もなく、仕切りの男の張り上げた声がその場に響いた。





｢主役共のぉ！！登場だァ！！！｣





ギャラリーからはたくさんの野次が飛び、雄叫びが上がる。相手のチームがゾロゾロと前に出るのと対照的に、帝釈天の兵隊たちは駆け足で前に出ると、左右に割れてそこに道を作る。その間を飄々と歩くのは、トップのAと四天王の彼らだった。なんとも様になるその絵面に、ギャラリーのテンションは爆上がりだ。





｢よォ、クソ女。｣

｢随分ご挨拶じゃねぇの♡｣





仕切りの男を完全に無視している状態の二人は、バチバチと火花を散らせた。その男こそ、本日の抗争の元となったチームの総長た。彼女が居ないのをいいことに、六本木で好き勝手に暴れまくり、俺がいちばん強いんだと我が物顔で街を練り歩く。

六本木は灰谷Aの仕切る場所。誰かに明け渡したつもりは一切ない。しかし、彼女が女と言うだけで舐めてかかる男なんてものは腐るほどいる。昔からそうだ。灰谷兄弟の妹。妹だから簡単にやれる。妹だから拉致ってしまえばこっちのもんだ。妹だから、女だから。

彼女はその言葉が何よりも嫌いだった。





｢あのさぁ、うちのシマで好き勝手やられると困るんだわ。｣

｢ハッ！てめぇみたいな女相手に怯むわけねぇだろォ？女が頭なんざァおたくのチームも大したことねぇなァ！！！｣





ゲラゲラと下品な笑い声をあげるその男を前に、Aは一切表情を崩さない。その代わりに、少しも形を変えずただその男を見つめる目の奥からは、殺気が漏れ出ていた。

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