前髪と息子-5【呪術廻戦】 (ページ29)

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高専の裏にあるいつものベンチに座ってタバコに火をつける。もくもくと上がっていく紫煙を見ながら、ただボーッと座っていた。

挨拶回りをして、京都にいる友人にはメッセージを送った。日本を発つまであと数日。

｢A。｣

｢……なんだ、雅火か。｣

隣いい？と聞いてくる彼に小さく頷いて少し横にズレる。彼はそこに座ると、ポケットから彼と同じ銘柄のタバコを取り出して火をつけた。

｢ｹﾞﾎｯ…ｹﾞﾎｯ、！……やっぱ何度吸ってもなれないなぁ……｣

｢別に吸わなくていいんだよ。口の中に煙を溜め込んでおけば肺には入らないからね。火がつけられるならそれでいいんだから。｣

｢でも、せっかく持ってるんだし吸えたらかっこいいじゃん。｣

｢体に良くないんだから辞めておきな。｣

｢説得力ないよ……｣

呆れたようにため息をつく彼に、Aはくすくすと笑った。

｢それで、どうしたんだい？何か急用？｣

｢あぁ……実は……ちょっとお願いがあるんだ。｣

｢？……珍しいね。雅火がそんなに改まって。｣

｢うん……あのね、僕も海外に連れて行ってほしいんだ。｣

思わず間抜けな声が出てしまう。

｢……え、、、？｣

｢少しでもAの役に立ちたいんだ。仕事のサポートもするし、何でもする。｣

どうかな？と顔を覗き込んでくる雅火に、Aは少しの間考える。かと思うと、ゆるりと頬を上げた。

｢……いや、雅火には日本にいてもらいたい。頼みたいことがあるんだ。｣

｢……？｣

｢聞くかい？手伝うか否かは雅火の意思だけど。｣

今度はAが彼の顔を覗き込む番だ。しかし、雅火は考える間もなく小さく頷いた。

｢聞くよ、その話。｣

雅火のその答えに、Aは小さく微笑んだ。