○『 序壊 』3 ページ3
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「…は?」
睿は偉の言葉を聞いてぽっかり口を開けた。
自分と同い年かそれ以下の少年が自分を「最強のなんちゃらの男」等と称している。何言ってるんだ? この子。
偉は睿の考えている事を察したかの様に「言っとくけど僕絶対に君より年上だから! こう見えてもう成人済みだからね! 好きでこんな姿な訳じゃないし!」と食い気味に反論する。この子供が自分より年上で成人済み?
…いやまさか。
「とにかく! 君もうちょっと自分を大切に──…聞いてる? おっと」
男が動かない事に安心し、それと同時に眠気が襲ってくる。半ば気を失う形で、睿は眠りについた。頭から床にぶつけるところだったのを、偉が慌てて支える。
偉は幼いながらに整っている、母親似の睿の顔を見て小さく笑う。
「安心したんだね。いいんだよ、僕が来たからには、君にもう危険は訪れない。なんせ最強だったからね。…ごめんね、君の家族を助けられなくて」
偉は改めて部屋の惨状を見渡す。偉は「こんな筈じゃなかったんだよなぁ」と返事の来ない声を誰かに向けて投げ掛けた。
*
暖かい。ふわふわだ。そして眩しい。落ち着く。ああ、ここは天国?
そう思いながら睿は目を覚ました。と言っても、包帯を巻かれた左目は見えない。「どこだここ?」知らない部屋だった。白い壁、少し散らかった床。睿はベッドから這い出ようとした。
すると、「あ、起きた?」と偉が上から顔を出す。天井の電球にぶら下がっている。
「うわぁぁああああっ!!? はっ…は…、び、ビックリさせないでよ…!」
「うわー起きて早々元気だね。大丈夫ウェルカムだよ、うるさいのは元気な証拠★」
偉は天井から降りると、「ここは僕の家ね」と笑った。
適当に睿は返事をしながら、ここまでの経緯を辿り始めた。そして思い出した。家族の事を。
「お母さんは!? お父さんはっ…お兄ちゃん…!」
「オーケィオーケィ、Sit downだ少年。朝ご飯でも食べながら話そう」
ガバッ、と起き上がり偉の肩を掴む睿の肩を掴んで、偉は苦笑いで睿を落ち着かせた。
「左目の調子はどう?」そう言いながら偉は偉の手を引いた。「別に手繋がなくてもついてけるよ」と睿は首を傾げたが、「迷子になっちゃうかもだからね」と偉は手を繋いで離さなかった。…あながち間違いでもなかった。
部屋はそれほど大きいものではなかったが、部屋の外は屋敷級に広かった。なんだここ。
「えぇ、お城…!?」
「ううん、僕の家」
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