巨龍の屠畜骸【オリジナル】 (ページ17)

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○『解語の花は地べたに咲く』7 ページ17

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「Hey，一体どうしたんだいお兄さん？俺みたいな“子供”に負けちゃって。ざまぁないね〜、自分と他人の実力の差もわからないんだもんね〜」
「こ、の…！」

　一方、偉は睿が走っていった跡を追うように男達を蹴り飛ばしていた。
　この体になってから、人をぶっ飛ばすほどの蹴りを習得するまで随分時間がかかった。この細い体でどう戦うのか、道術士としてやっていけるのか。体質も血液型も元と違うもんだから、使い勝手が違う。それに勝手に怪我するわけにもいかない。

　だからこの体を変えるのではなくて、戦法を変えることにした。この体では、腕相撲で睿にすら負けるだろう。腕は弱かった。リーチが短いし、重さもない。ただ幸い足には筋肉が多い。蹴りはあまり主要としてこなかったが、元の体に戻った時も使える。

　今まで生きてきた28年間の中で、5年ちょっとをこの体で過ごしているが、難点は強く見えない事だ。

「なぁ、浩然(ハオラン)。俺前に言ったよなぁ。…“次来たら殺す”……って」

　偉は大男の名前を知っていた。前に、浩然が土下座して泣くまで殴った事がある。二度と刃向かえないようにトラウマにしたはずだが、この屋敷の中で一番強くなって調子に乗ったらしい。どうやらもう一度プライドを根っこから折ってやらなきゃあいけないようだ。

　まぁ、前ここを潰した時と今の体は、全くの別人なのだから気が付かなくて当たり前だが。

「美雨さん！どこ！？いたら返事して！美雨さん!!」

　美雨を探しながら、偉は走り続けていた。
　屋敷の一番奥の部屋で、美雨の後ろ姿を見付けた。名前を呼ぶと、すぐに気が付いて振り向いた。良かった、無事だ。

「美雨さ…、！」
「やぁ少年、どこから入ってきたのかな？」

　その部屋のドアを勢いよく閉め、睿の前に立ちはだかったのは、細身で長髪の男性だった。美雨に気をとられて、男の靴が自分に向かっている事に気が付かなかった。
　もろに男の蹴りを腹に食らう。

　体重の軽さから吹き飛ばされ、高そうな床を滑るように這う。

「が、はっ……、あ”っ……」
「君も僕の邪魔をしにきたのかい…？ ──随分偉そうだなクソガキが…!! 死ね!! 僕の邪魔をしていい奴なんてこの世にいないんだ!! 僕が世界のルールなんだ!! 前にもいたんだよなぁ、あの女を取り返そうとするガキどもが!!」

　男は続けて蹴ってきた。
　脳裏に浮かんでいる忌々しい記憶を打ち消すように。