○『 解語の花は地べたに咲く 』6 ページ16
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いやいやいや、分かる訳があるか。「こう」と言われても何が「どう」なのだ。化け物の基準でものを言わないで欲しい。
「無理だよあんな事」
「知ってる。君は戦うというより、躱す事に集中するんだ。流石に太極拳を始めてまだ数ヶ月のガキに負ける程、ここの奴らも弱くない。だから君は攻撃を躱すんだ。相手の体力を消耗させるだけでいい。倒すのは君の体がもっと大人に近づいてからだ」
偉はするりと屋敷の中に入っていく。睿も慌てて追うが、偉の足が速い。速い上、音も立っていない。
足の小指から地面に着けて走る技術。日本の“忍者”が使う足の踏み方らしく、「日本人の友人から教わった」と偉は言った。これだと音が出ないらしい。見よう見まねでやってはみるが、足を間違って捻りそうだ。
「(けど、これならバレずにいけるかも……)」
そう思った矢先。
進行方向が、ふっと陰った。現れたのは壁……のような男。美雨が連れ去られた時現れたあの大男だ。一気に冷や汗が飛び出てきた。大男は笑いながら「よう坊主」と言った。
「今度はお友達も連れてきたのか？ 可愛い助っ人だな？」
「あ”ァ！？」
「ちょ、怒んないで」
偉が元々不機嫌なせいか、今日は子供に見られることに対して、初っ端からキレ散らかしている。偉は睿の方を向いて言った。「こいつ殺そ」んな物騒な。
「睿、この際もうここはぶっ潰して帰ろう。もう隠れる必要はない。君はここを走り回って攻撃を避けまくれ。避けまくって撹乱しろ。君の事を守りながら俺はこいつらをボコす。美雨を見つけてきてくれ、見つけたら君は美雨と帰る。できるか？」
「勿論」
「頼んだよ」
偉はコキ、と首を鳴らして回すと、袖で隠れていた腕を出した。「無傷で満点だ、行って来い！」そう言われて、睿は飛び出す。
偉が守りながら戦ってくれるなら何も怖くない。いや、怖いけど。
大男の悲鳴が聞こえた。その声を聞いて、次々と人が出てくる。
拳を躱して走る。警棒を手で弾き飛ばして避ける。足と足の間をくぐり抜ける。ちょっと余裕が出てきたので股にあった出っ張りを殴った。すると男は数秒遅れて叫び出した。
「うわぁぁぁぁっ、ああっ…!! 俺のっ…俺の…!!」
「大丈夫か？ いやなんだあのガキ！？」
「人の大事なとこ殴って走るとかどんな子供だよ」
だけど幸運だった。幸いうちの師匠は元最強。一度も避けられない速度の蹴りに比べれば、男達の拳を避ける事なら造作もない事だ。
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