○『 解語の花は地べたに咲く 』5 ページ15
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「ねぇ、なんで美雨さんは連れてかれたの？」
「美雨の所の、李家の血筋が特別だからだよ」
「特別？」
「そうさ」
偉は無表情に頷く。
「どんな風に特別なの？」そう聞くと、偉は頬杖を付きながら言った。
「この世には数多に、一般人とは違う特別な血筋を持つ人達がいる。それは、桁外れに運動能力が高かったり、頭が良かったり。まぁ要はメチャクチャに優秀な人達しか生まれない血筋なんだ。李家の血は特に、僕ら道術士の中では重宝されている」
「道術士の中で？」
「そう。“特別陽の濃度が高い”血筋さ。女性ばかりの家系でありながら、皆陽の濃度は男性と同じ──もしくはそれ以上だ。だから、道術士の名家に嫁ぐ事が多い。本人の意思でもなくね」
偉の口元が歪んでいる。苛立っているのだろう。睿には理解し得ないが、その理不尽に、自由の剥奪に──。
つまり、美雨が連れ去られたということは勝手に結婚させられてしまうという事になる。恐らくそれが望まぬ結婚だったから彼女はここにいたのだ。
「美雨は、彼女が子供の頃に、君の兄弟子達が拾ってきたんだ。今向かっている場所は、道術士の中流域の輩の屋敷でね。屍尸の違法所持をしていて、昔殲滅しに行った。そこで見つけた」
そうこう言っているうちに着いたよ、と言って偉は車を降りた。続いて、睿も車から降りる。ビルがすぐ近くに見えるほどの都会だが、住宅街でもあった。大きい屋敷だ。
塀が2人の身長よりも高く聳えている。門の前には警備員。偉は「大丈夫、塀くらい余裕で越えられるさ」と言って、睿の手を掴んだ。
「──え」
そして偉は走り出す。とんでもない速度で。角を曲がり警備員がこちらを見れない場所まで来ると、その勢いのまま高く飛んだ。
思わず声を出しそうになると、偉に口を塞がれた。
偉は音を立たせずに茂みに着地した。
なんて速さだろう。車だって余裕で追い越せそうな速さだった。それにジャンプの高さも桁外れ。その細っちょろい足からどうしたらあんなバネのような飛躍が生まれるのだろう。
彼の言うところの“元最強”の片鱗を身をもって体験をした。偉の底が知れない。
「睿、これからお手本見せるから」
すると瞬間移動のように偉は入口へ移動すると、そこにも立っていたガタイのいい男二人のうち、一人を蹴り落とし、もう一人を絞め落とした。
偉は言った。「こう。分かった？」
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